美術の教科書を開くと、最初に登場する絵は何だと思いますか?
なんと、紀元前2万年に描かれたアルタミラ洞窟の壁画が出てきます。
電気のない時代、入り口から30メートルも奥にある真っ暗な大広間に、1.6メートルもの大きさで見事に描かれた牛の絵。
はるか昔より、人間がアートを求めてやまない何よりの証拠と感じられます。
アートには人を感動させる力がある
ニューヨークで起きた9.11事件後、いち早く人々が訪れた場所。 それは美術館だったそうです。 絶望の淵に立たされていた人々が心の安らぎを求めた先はアートでした。
多くのアートには実用性や機能性が欠けていますが、だからこそ逆に精神性や無邪気な魅力が際立っています。 アートに魅了されるとは、合理性を考えずに、その世界の素晴らしさに耽ることでもあるのでしょう。そこにあるのは、ただ知識や教養を得ることではなく、作品に対して感動する心です。 アートの鑑賞は、うっとりする心であったり、知的な興奮であったり、脳が活発に刺激されることが基本となるのです。
例えば私は、美術館で好きなアートに触れているときはもちろん、オペラを観ているときにも同じ心地がします。
私は美術大学の出身で、卒業後はずっと画商業界でビジネスをしているので、音楽については門外漢です。しかし、なぜかオペラだけは大好きで定期的に新国立劇場に聴きに行きます。目を楽しませてくれる背景の舞台装飾や登場人物のきらびやかな衣装、それと何と言っても歌による陶酔感は、他の娯楽ではなかなか得られない快感です。
もちろん、家族と旅行をしたり、友人とゴルフをしたりも十分に楽しいのですが、アートや好きな芸術に触れるときにはそれらとは異次元の知的興奮があります。
脳の認知科学では、美しいと感じた刺激に対して、前頭眼窩野の内側部分が活性化すると言われています。報酬に関するこの領域は、美しいと判断したものを見たときに、視覚と快楽を結び付け、人間に喜びを与えます。
また、眼窩前頭皮質では、美しさと良さに対する反応に重複する神経活動があります。私たちの脳は反射的に、美しさと良さを関連付けているそうです。
人間の本源的な欲求を突き動かすもの
新型コロナウイルス感染症の猛威は、世界中の美術館にも多大なる影響を与えています。
日本では緊急事態宣言に伴い、東京でも国立西洋美術館や東京都現代美術館をはじめ、多くの美術館が企画を中止して館を閉めてしまいました。
現在、多くの美術館が再開していますが、感染防止への観点からマスク着用の義務化、事前予約制などの措置が取られ、入館者数への制限がかかっています。
しかしそんな中でも、非常にたくさんの人が美術館へ足を運んでいます。
3月中旬より休館してきたアメリカ・ニューヨーク州の美術館などが8月24日をもって再開可能となりました。
きっと、9.11事件後と同様、多くの人が美術館でアート鑑賞を心で楽しむことでしょう。
パブロ・ピカソはこのような言葉を残しています。
‟Art washes away from the soul the dust of everyday life.
芸術は日々の生活のほこりを魂から洗い流してくれる。”
人の手で生み出される生産財が、エントロピーの法則に従うかのようにコモデティ化する中で、芸術家によって作られる芸術作品の一部が数億、数十億、数百億円という値段で取引されていることは、合理的には説明のつかない事態です。
なおかつ、まったく有用な機能を伴わず、鑑賞すること以外に何の役にも立たない作品ほど高尚でファインアート(純粋美術)などと言って価値が高まるのは、なかなか理解が難しいことでしょう。
それでも、合理的には説明のつかないアートの魅力に、紀元前2万年前から我々は逃げることはできないのです。
翠波画廊ではアートのある暮らしをご提案しています
一枚の絵画がもたらしてくれる憩いのひと時を
優れた芸術作品は、観る人の感情にそっと働きかけ、美的欲求を満たし、こころを豊かにしてくれるものです。
翠波画廊では、アートの魅力をお伝えし続けるなかで多くのお客様に数多くの作品をお届けしてきました。
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