オークションではどんな絵が売れたのか?
~バンクシー、ゴッホ、モディリアーニ
2018年上半期、競売大手のクリスティーズは、前年同期比35%アップで、4424億円の売上を記録しました。これは半期売上総額の史上最高額だったそうです。
大きな理由はロックフェラー・コレクションの売却で、個人コレクションでは過去最高の907億円の売上になりました。
下半期も、アメリカの実業家バーニー・エブスワースの20世紀絵画コレクションが、総額370億円で落札されました。
同コレクションの売却では、エドワード・ホッパーとウィレム・デ・クーニングの作品が、それぞれ作家の最高落札価格記録を更新しています。
そのほか、今年のオークションではどんな絵が売れたのでしょう?
2018年の絵画オークションでいちばん話題になったのは、10月のバンクシー「風船と少女」の落札でしょうか。
正体不明の覆面画家として知られるバンクシーは、これまでにも「風船と少女」のモチーフをいくつかの壁にストリートアートとして残しています。
今回オークションにかけられたのは、バンクシーには珍しくキャンバスに描かれたもので、額装されてオークションに登場しました。
サザビーズの予想価格は4000万円前後でしたが、話題のバンクシー作品とあって約1億5500万円まで値が上がり、落札を告げる小槌が振り下ろされました。
その直後のことです。
額装された絵画から異音が起き、仕込まれたシュレッダーが絵を切り刻みました。
1億5500万円の絵が、観客の目の前で台無しになっていきます。
慌てるオークショナーを笑うように、下半分を細断してシュレッダーは止まりました。
翌日、バンクシーは自らのウェブサイトで「犯行」を宣言し、「数年前から仕込んでいた」とシュレッダーの制作風景とテストの動画を公開しました。美術品の無残な破壊と思いきや、アーティスト自身の仕業だったのです。
不可解なのはこの後です。
アーティスト自身による作品の「破壊」は、新たな現代アートの創造であったとして、作品の価値がさらに上がったことが関係者から語られました。
落札者も「美術史に残る作品が自分のものになる」と、そのままの状態での購入を表明しました。
そしてサザビーズは、作品名を「風船と少女」から「愛はゴミ箱へ」と改題することを宣言したのです。
現代アートは、作品そのものを鑑賞するのではなく、イベントを楽しむものになってしまったかのようです。
もう一つの現代的な話題は、同じく10月のAI(人工知能)が描いた絵画の落札です。
フランスの技術者グループ「オブビアス」(Obvious)は、クラシカルな肖像画1万5000点をコンピュータに読み込ませ、アルゴリズムで新たな肖像画を次々に生成させました。
ただ画像を生成するだけでなく、別のアルゴリズムで、人間が描いたように見えるかどうかを判定させて、精度をあげていったそうです。
最終的に「オブビアス」は、完成した肖像画のうちの1枚を「エドモン・ド・ベラミー」と名づけ、クリスティーズのオークションに出品しました。
「オブビアス」の予想価格は100万円前後でしたが、最終的には4900万円の高額で落札されました。
AIが描いた絵画が落札されるのは史上初ですから、これも美術史に残る出来事でしょう。
そのうち、AIが本物そっくりに描いたピカソや藤田嗣治の「新作」が美術市場に出てくるかもしれません。
79億円
そのほか、今年はゴッホの絵画が数多くオークションに出品されました。
2017年『ゴッホ~最期の手紙~』、2018年『世界で一番ゴッホを描いた男』、2019年『永遠の門 ゴッホの見た未来』と、立て続けに日本で映画が公開されるなど、ゴッホ人気は止まりません。
まず5月に、サザビーズのオークションで「アリスカンの並木道」が79億円で落札されました。これはゴッホ作品のオークションレコードで歴代3位の記録になりました。ここ20年では最高落札価格です。
9億円
6月、フランスで約20年ぶりにゴッホ作品がオークションにかけられ、9億円で落札されました。ゴッホの場合、初期オランダ時代とパリに渡って以降とで、作風も価格もだいぶ異なってきます。
11月には、昨年の東京都美術館「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」で展示されていた作品「蝶の舞う庭の片隅」がクリスティーズのオークションに登場し、34億円で落札されました。この作品はパリ時代のものです。
34億円
また、2018年は現存作家のオークション落札記録が更新された年でもあります。
1937年生まれのイギリス画家デイヴィッド・ホックニーは、アメリカに渡ってアンディ・ウォーホルと出会い、ポップアートの旗手の一人となります。
その代表作の一つ「芸術家の肖像画(プールと2人の人物)」が11月にクリスティーズのオークションに出品され、102億円で落札されました。存命作家の史上最高価格になります。
なお、2018年の美術品オークションの落札最高額は172億円のモディリアーニで、これは美術品オークション歴代4位、美術品歴代取引額でも12位に食い込みました。 全体として絵画の価格は上昇を続けているといっていいでしょう。
高額取引絵画ランキング・トップ12(2018年12月現在)
1. ダ・ヴィンチ「サルバトール・ムンディ」2017年、約4億5000万ドル(オークション)
2. デ・クーニング「インターチェンジ」2015年、約3億ドル(個人間取引)
3. セザンヌ「カード遊びをする人々」2011年、約2億5000万ドル(個人間取引)
4. ゴーギャン「いつ結婚するの?」2014年、約2億1000万ドル(個人間取引)
5. ポロック「Number 17A」2015年、約2億ドル(個人間取引)
6. ロスコ「No.6」2014年、約1億8600万ドル(個人間取引)
7. クリムト「水蛇Ⅱ」2013年、約1億8400万ドル(個人間取引)
8. レンブラント「マールテン・ソールマンスとオーペン・コーピットの肖像」(2枚1組)2015年、約1億8000万ドル(個人間取引)
9. ピカソ「アルジェの女たち(バージョンO)」2015年、約1億7900万ドル(オークション)
10. モディリアーニ「横たわる裸婦」2015年、約1億7000万ドル(オークション)
11.リキテンスタイン「マスターピース」2017年、約1億6500万ドル(個人間取引)
12. モディリアーニ「(左向きに)横たわる裸婦」2018年、1億5720万ドル(オークション)
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