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国立西洋美術館はなぜ作られたのか?
~日本一のアートコレクター松方幸次郎の収集術

上野公園は日本のミュージアムの聖地です。
東京国立博物館、国立科学博物館をはじめ、国立西洋美術館、東京都美術館、上野の森美術館、東京藝術大学大学美術館、などが並び、一日ではとても回りきれません。
なかでも国立西洋美術館は、前庭の無料エリアに《地獄の門》や《考える人》などロダンの彫刻がいくつも並び、西洋美術好きの憩いの地となっています。
この国立西洋美術館が、一人の実業家のアートコレクションからできていることをご存知でしょうか?
そのアートコレクターの名前は松方幸次郎。
株式会社川崎造船所社長で、衆議院議員も務めた明治時代の富豪です。

アートコレクター松方幸次郎

ルノワール《アルジェリア風のパリの女たち》1872年、国立西洋美術館

松方幸次郎はなぜアートコレクターになったのでしょうか?
親交のあった美術評論家の矢代幸雄は、松方幸次郎は美術を愛したというよりも、現代の文化における美術の重要性を政治的に認識して、日本の国際的地位向上のため、さらには本場の絵を見られない日本の画家のために、西洋の名画を買い集めたのではなかったかと解釈しています。
また、絵を買うためといって渡独してドイツの潜水艦の設計図を入手してきたという逸話もあり、松方にとってアートコレクターの肩書きは、西洋人の懐に入り込むための処世術の側面もあったと考えられます。
そんな松方幸次郎ですが、そのアートコレクションは中途半端なものではありません。
第一次世界大戦の好景気で川崎造船所がうるおい、社長の松方には当時の金額で3000万円の自由なお金ができました。
パリで一人暮らしをする生活費が一ヶ月200円程度の時代ですから、今でいえば300億円以上に相当するでしょう。
そのお金で絵を買いまくったわけですが、当然ながら最初は誰でも素人です。
松方のコレクションの相談相手となったのは、ロンドンでは画家のフランク・ブラングィン、パリではリュクサンブール美術館の館長レオンス・ベネティエットでした。
ところが、美術館の館長がすすめる美術品というのは、すでに定評のある作家の作品が多くなります。
そのアドバイスだけを聞いていると保守的なコレクションになってしまいますが、松方は周囲の意見もよく聞いて、ゴッホやゴーギャンなどの新進画家の作品も購入しました。彼らが亡くなってから20年くらいしか経っていない頃の話です。
そのため松方コレクションにはゴッホ《寝室》、マネ《自画像》、モネ《睡蓮》、ルノワール《アルジェリア風のパリの女たち》など、後になって評価が高まった名品が多いのです。

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松方幸次郎がモネから絵を買った話

モネ《睡蓮》1916年、国立西洋美術館

なにしろどんどん絵を買うのですから、松方の周りには自然と画商が集まります。
デュラン=リュエル、ベルネーム=ジューヌ、ローザンベール、ジョルジュ・プティなど当時のフランスの名だたる画商たちが、松方幸次郎を自宅に招いてコレクションを披露しました。
そんな松方幸次郎の交友記のなかでも出色なのは、ジヴェルニーに住むモネとの交際です。
モネの家の廊下には一面に日本の浮世絵が飾られていて、部屋に入るとモネ自身の絵が飾ってあるのですが、その色合いがそっくりで、モネがいかに浮世絵に影響を受けていたかがわかると、矢代幸雄は著書『藝術のパトロン』に記しています。
さらに、パリのオランジュリー美術館にあるモネ《睡蓮》が横に細長いのは、日本の屏風絵を意識したのではないかとも解釈しています。
訪問記では、モネが好きなナポレオンのブランデーを松方がおみやげに買っていったとか、それを見たモネが「ナポレオーン!」と叫んで喜んだとか、ディティールが細かくて興味が尽きません。
その日、松方幸次郎は18枚の絵を購入したいとモネに告げ、感激したモネは「自宅にあるのは売りたくない絵だが、特別に譲ってあげよう」と言ったそうです。

松方幸次郎のコレクションはどうなったのか?

ゴッホ《寝室》1889年、オルセー美術館

さて、そうやって集められた松方コレクションですが、いささか悲しい話があります。
3000点と言われた西洋美術作品のうち、松方幸次郎が日本に持ち帰ったのは半数の1500点ほどでした。
関東大震災の復興のため、ぜいたく品である美術品には莫大な関税がかけられたため、900点あまりはロンドンに、400点あまりはパリにそのまま保管されることになりました。
そうこうしているうちに第二次世界大戦が始まり、ロンドンのコレクションは戦災で消失し、パリのコレクションは敵国財産としてフランス政府に没収されてしまったのです。
日本に持ち帰られたコレクションも、世界恐慌で川崎造船所が破綻したために、競売で売却せざるを得なくなりました。
こうして、松方コレクションは散逸してしまったのです。
現在、日本で売却された作品の一部は、京橋のアーティゾン美術館に所蔵されています。
そして、フランス政府に没収された松方コレクションは、戦後にフランスとの間で平和条約が結ばれてから、あらためて日本に寄贈されることになりました。
もちろん、吉田茂首相をはじめとする関係者の粘り強い交渉があってのものです。
寄贈の条件として、西洋美術専用の美術館を作ることが求められ、そうして設立されたのが国立西洋美術館です。設計は、フランスの建築家ル・コルビュジエに委譲されました。
しかし、400点と言われたパリのコレクションのうち、戦後にフランス政府から寄贈されたのは370点でした。
ゴッホ《寝室》など一部の作品は、国宝級の価値があるためにフランス国外には出せないとの理由で、寄贈作品から除かれてしまったのです。
裏を返せば、それだけ松方コレクションが素晴らしかったということでしょう。
上野の国立西洋美術館に行くたびに、アートコレクター松方幸次郎のことが思い出されます。

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