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アンディ・ウォーホル《マリリン・モンロー》はなぜ高額になったのか?
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アンディ・ウォーホル
《ショット・セージブルー・マリリン》

2022年、コロナ禍から劇的に回復したアートマーケットは、記録的な高額落札を続出しました。
特に目立ったのが、5月9日にニューヨークのオークションで落札されたアンディ・ウォーホル《ショット・セージブルー・マリリン》です。その価格は手数料込み1億9500万ドル(約254億円)で、歴代のオークションにおける絵画落札価格の2位となりました。
1位は2017年に落札されたダ・ヴィンチ《サルヴァトール・ムンディ》ですが、近現代アートでは史上最高価格であり、油彩ではなくシルクスクリーンであることも特徴的です。
ウォーホル《ショット・セージブルー・マリリン》は、1953年にマリリン・モンローが主演した映画『ナイアガラ』の広報写真を流用したシルクスクリーン版画であり、大量に作られているため1点の価格がそれほどまでに上がるとは思われていなかったのです。
実は《ショット・セージブルー・マリリン》の価格高騰には裏の背景がありました。

ショットとは何か?

ウォーホル《ショット・セージブルー・マリリン》の価格が記録的なものになった理由の一つは、その名前にあります。
通常、ウォーホルのマリリン・モンローのシルクスクリーン作品には《マリリン・モンロー》という名前が付けられています。
しかし、高額落札された作品のタイトルは《ショット・セージブルー・マリリン》です。これは、「ショット」(撃たれた)、「セージブルー」色の、「マリリン」・モンロー作品という意味を持っています。
「セージブルー」は、作品の背景色を表しています。この作品は1964年にウォーホルがシルクスクリーン技法を用いて描いた5枚組のうちの1点です。レッド、オレンジ、ライトブルー、セージブルー、ターコイズの5枚があり、落札されたのはそのうちのセージブルーの作品なのです。
そして「ショット」は、この作品が実際に拳銃によって撃たれたことを意味します。

ウォーホルは5枚の作品を自身のアトリエに保管していました。制作にアシスタントの手を借りて大量生産していることから、ウォーホル自身が「ファクトリー」(工場)と呼んでいたアトリエです。
ファクトリーには多くの自称アーティストが出入りしていました。ウォーホルが創作のインスピレーションにするため、ファクトリーを自由に開放していたからです。
その日やってきたのは写真家ビリー・ネームの知人のパフォーマンス・アーティスト、ドロシー・ポドパーでした。
彼女は5枚組のマリリンを見て、その場にいたウォーホルに「シュートしてもいい?」と尋ねました。英語でシュートといえば、「撃つ」とか「放つ」とかいろいろな意味がありますが、ここではカメラで撮影することと理解されます。ウォーホルがOKすると、なんとドロシーは拳銃をとりだして、立てかけてあったマリリンの額を撃ち抜いたのです。5枚のうちターコイズを除いた4枚に穴が空きました。
これはドロシーのパフォーマンスでした。彼女はウォーホルが「シュート(撮影)」を許可することを見越して、最初から拳銃で撃つつもりで持ってきていたのです。
ウォーホルは不快感を表し、ドロシーはその後ファクトリーに出入り禁止とされました。

銃で撃たれることの意味

穴のあいた4枚の作品は「ショット・マリリン」と呼ばれるようになり、ウォーホルのマリリン作品の中でも特別な地位を占めるようになりました。
つまり《ショット・セージブルー・マリリン》は、ただの大量生産のシルクスクリーン版画ではなく、図らずもパフォーマンス・アートの犠牲となった特別な作品だったのです。
ちなみに他の「ショット・マリリン」もそれぞれ高額で売却されています。
《ショット・ライトブルー・マリリン》は1967年に5000ドルで購入したコレクターがそのままずっと持っています。
《ショット・レッド・マリリン》は1989年に410万ドルで日本人に落札されました。
《ショット・オレンジ・マリリン》は2017年に2億ドル以上でコレクターに売却されたと噂されています。
ショットされていない《ターコイズ・マリリン》ですら2007年に8000万ドルで取引されています。

ウォーホル、ホッパー
《ショット・毛沢東》
約30万ドルで落札

余談ですが、後に俳優のデニス・ホッパーが、自宅の壁に飾っていたウォーホル《毛沢東》のシルクスクリーン作品に対して、錯乱して拳銃で2発撃ちこんだという話があります。
このとき、ウォーホルは寛大にもその銃弾の痕を丸く囲って示すとともに、文字を書き加えて2人のコラボレーション作品とすることに同意しました。
この《ショット・毛沢東》は2011年にオークションに出品されて、約30万ドルで落札されています。

《ショット・毛沢東》の落札価格からもわかるように、ただ拳銃で撃たれたというだけでは254億円もの価格になる理由にはなりません。
《ショット・セージブルー・マリリン》が記録的な価格になった理由はほかにもあります。おそらく美術業界の相場とか流行とでもいうべき力が働いたのです。

ラリー・ガゴシアンによる落札

2017年に《ショット・オレンジ・マリリン》が2億ドル以上で取引されたという噂から、《ショット・セージブルー・マリリン》のオークションに際して、クリスティーズは予想落札価格を2億ドルと見積もりました。
クリスティーズは2017年にダ・ヴィンチ《サルヴァトール・ムンディ》をオークションにかけて4億5030万ドルで売却しているため、プロモーションに自信を持ったのでしょう。
《サルヴァトール・ムンディ》同様、何カ月も前から《ショット・セージブルー・マリリン》のオークション開催は広く宣伝されていました。クリスティーズは、ロックフェラー・センターの外壁に何日も作品画像を投影することまで行いました。
ネットフリックスでアンディ・ウォーホルやマリリン・モンローのドキュメンタリー作品が新しく公開されたのも軌を一にしていました。
クリスティーズの担当者は「ウォーホル《マリリン》は、ボッティチェッリ《ヴィーナスの誕生》、ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》、ピカソ《アヴィニョンの娘たち》と並ぶ史上最高の絵画の一つです」とまで述べました。

オークションが始まると、4人の入札者が競り合い、わずか4分間のうちに1億7000万ドルまで値が上がって決着がつきました。クリスティーズの予想価格であった2億ドルには3000万ドル不足でしたが、オークション会社が落札者から受け取る手数料を含めた販売価格は1億9500万ドルと、ほぼ予想通りになりました。
落札者は、世界最大手の現代アート・ギャラリーのオーナー、ラリー・ガゴシアンでした。ガゴシアン・ギャラリーでは、草間彌生や村上隆や石田徹也といった日本人作家から、アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズ、ダミアン・ハーストといったレジェンドまで、現代アートを幅広く扱っています。
ラリー・ガゴシアンは、この落札が顧客のためであったかどうかを明らかにしていません。
もしかすると、ラリー・ガゴシアンはウォーホル《ショット・セージブルー・マリリン》をガゴシアン・ギャラリーのために落札したのかもしれません。
《ショット・セージブルー・マリリン》は20世紀の作品の史上最高落札価格となり、現代アート作品にこれだけの価格がついたという実績になりました。
現代アートでもここまでの価格になるのだという期待が市場に形成されれば、現代アート作品全体の価格相場が上昇します。
現代アート作品の価格相場が上昇すれば、市場全体が活気づきます。
もちろんウォーホル作品の価格相場も上がりました。
つまり、ラリー・ガゴシアンにとってはそれだけの金額をかける価値があったのです。
もしかすると、自らが落札するつもりはなくて、競争している他の入札者に2億ドルをつけてほしかったのかもしれませんが、自分自身の落札でもガゴシアン・ギャラリーの宣伝になるのでさほど問題はないでしょう。
こうして《ショット・セージブルー・マリリン》は記録的な高額落札となったのです。


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