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ガザに潜入したバンクシーの壁画とメッセージとは?
イスラエルとハマスの軍事衝突は今回が始めてではない

2023年、イスラエルとパレスチナのガザ地区を支配するハマスとの間で大規模な軍事衝突が起きました。
一連の戦闘による死者は1万人を超えています。
イスラエルとパレスチナとの間には100年以上に及ぶ争いの歴史があります。
9年前の2014年にもイスラエルによるガザ地区への軍事侵攻がありました。
ハマスからイスラエルに対するロケットミサイルや迫撃砲などの攻撃に対して、イスラエル国防軍の地上部隊がガザ地区に軍事侵攻したのです。この作戦は”Protective Edge “(壁を守る)と呼ばれました。
2014年7月8日から始まったイスラエルの軍事作戦は、ガザ地区に壊滅的な被害と多数の死傷者をもたらしました。
イスラエルはハマスのロケット攻撃を阻止するという名目で、空爆、海上封鎖、地上侵攻をおこないました。
ハマスは、イスラエルによる封鎖と占領に対する抵抗として、ロケットやトンネルを使って反撃しました。
50日間に及ぶ戦闘の末、2014年8月26日にエジプトの仲介で停戦合意が成立しました。
停戦の後にバンクシーはガザ地区に入り、世界にこの悲劇を知らせるためにいくつかのアートを残しました。

パレスチナのガザ地区に目を向けるよう呼びかけるバンクシー

ガザ地区は、イスラエルとの紛争により、破壊された建物や鉄くずで溢れています。
そんなガザに、世界的に有名なストリート・アーティスト、バンクシーが潜入しました。
バンクシーは、ガザの人々の苦しみや抵抗を表現した壁画をいくつか描き、その様子を記録したミニドキュメンタリーを公開しました。
バンクシーの作品は、ガザの現実を世界に知らせるだけでなく、私たちに何かをしようという気持ちを呼び起こさせます。
「Make this the year YOU discover a new destination」(新しい土地を発見する年にしよう)と名付けられたバンクシーのミニドキュメンタリーは、観光地を紹介するビデオを模してガザの現実を伝えています。
「ガザへようこそ」「観光ルートから遠く離れて(不法に作られたトンネルを抜けて入る)」との文字の後に映されるのは、破壊されたガザの街です。
「人々はこの街が好きすぎて離れようとしない」の文字とともに現地の子どもたちの映像が入り、「(外へ出ることが許されていないからだ)」の文字とともにイスラエルの軍人が映されます。
破壊された街の瓦礫の映像とともに「並外れた光景に住んでいる」と皮肉なテロップが入り、「(三方向には壁、海には軍艦)」と、イスラエルがガザ地区の住民を閉じ込めるために築いた防護壁と、銃座が設置された監視塔が映ります。
さらに「親切な隣人たちに監視されて(2014年には壁を守る作戦で1万8000の家屋が破壊された)」の文字とともにロケットで破壊される建物の映像が入り、「そこら中に開発の機会がある(爆撃が始まってからセメントの搬入は禁止されているけど)」と徹頭徹尾、皮肉で固めたテロップが続きます。

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バンクシーがガザ地区に残した3つの壁画

バンクシー《Walled Off Hotel Boxset》(監視塔で遊ぶ子どもたち)
過去に翠波画廊で販売

バンクシーの作品は、ガザの人々の苦しみや抵抗を表現するとともに、私たちに何らかの行動を呼びかけています。)
ミニドキュメンタリーに映されたバンクシーの作品の中には、イスラエルの監視塔が子どもの遊具に変わっている壁画や、鉄くずで遊ぶ子猫の壁画などがあります。)
壁画には、ガザの状況に対する皮肉や風刺が込められています。)
たとえばイスラエルの監視塔が子どもの遊具に変わっている壁画は、ガザの子どもたちが自由に遊べないことを示しています。)
また、鉄くずを毛糸玉のようにして遊ぶ子猫の壁画は、ネット上で猫動画ばかりを見て癒やされている非政治的な人々に、ガザの猫の過酷な環境を見せて、ガザに目を向けようと人々をうながしています。)
さらに、ロダンの《考える人》を模した壁画は、ガザの人々が絶望で嘆き悲しむことに忙しく、哲学的な思索にふける余裕がないことを暗示しているかのようです。

 
 
 
 
 
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バンクシーから私たちに向けてのメッセージ

ミニドキュメンタリーは、最後に、バンクシーが壁に書いた次のような言葉を映して終わります。
「力を持つ者と持たざる者の争いに背を向けるなら、それは力を持つ側に立つことになる。中立な立場などありえない」
この言葉は、私たちがガザの問題に無関心でいてはならないということを教えてくれます。
バンクシーの作品は、ガザの人々に寄り添うとともに、ガザの状況を変えるためには何ができるのかという問いを投げかけています。
彼は、危険なガザに潜入して自分の作品を残すことで、ガザの人々の声を世界中に届けようとしました。
しかし、残念ながらイスラエルとガザ地区との溝は埋まらず、2023年の大規模な軍事衝突につながってしまいました。
両者の対立の根は深く、誰もが納得する解決の道筋は見えません。
それでも私たちは暴力ではなく、《考える人》であり続ける必要があります。

翠波画廊では、バンクシーの作品を取り扱っています。
ぜひご覧になってください。

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