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現代アートの商業化の起点 — スカル・オークションが変えた芸術市場

1973年10月18日、ニューヨークの空が夕焼けに染まる頃、サザビーズ競売場には異様な熱気が満ちていました。
普段なら穏やかな美術品取引の場が、この日ばかりは歴史的瞬間の舞台となるとは、集まった人々の誰もが予想していなかったかもしれません。
会場の外では怒りに満ちた芸術家たちがプラカードを掲げ、「芸術は商品ではない!」と叫ぶ声が冷たい秋風に乗って響いていました。中では着飾った富裕層が着席し、カタログを手に緊張した面持ちで競売の開始を待っていました。
タクシー事業で財を成したロバートとエセルのスカル夫妻による現代美術コレクション50点の競売は、美術界に前代未聞の衝撃を与えたのです。

芸術の愛好者か、冷徹な投資家か

アンディ・ウォーホル《KIKU》

スカル夫妻は1950年代から約20年間、抽象表現主義からポップアートまで、当時の最先端の芸術作品を精力的に収集していました。
彼らは単なるコレクターではなく、多くの芸術家の才能を見出し、支援する後援者としての顔も持っていました。
マーク・ロスコー、ロバート・ラウシェンバーグ、アンディ・ウォーホル、ジャスパー・ジョーンズといった、現在では美術史に名を刻む巨匠たちと親交を深め、彼らの作品を直接購入していたのです。
スカル夫妻はアトリエを訪れ、芸術家たちと深夜まで語り合い、時には無名だった彼らの作品を数百ドルで購入することもあったといいます。
芸術に対する純粋な愛と目利きの確かさで、彼らは美術界で一目置かれる存在となっていました。

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前代未聞のブロックバスター・オークション

ジャスパー・ジョーンズ《標的》、シカゴ美術館

オークション会社はこの競売のために異例の広報戦略を展開しました。
豪華なカタログを制作し、アメリカ国内だけでなく、ロンドン、パリ、ベルリンといった欧州の主要都市でプレビュー展示を行いました。美術品競売としては初めての大々的なプロモーションでした。
競売前夜には著名な美術関係者や社交界の名士たちを招いたプレビュー・パーティーが開かれ、シャンパンが振る舞われる中、スカル夫妻が自らのコレクションについて熱く語ったそうです。
その姿はまるで、愛する子どもたちを送り出す親のようでした。
しかし美術界は彼らの行動を手厳しく非難しました。
当時は、芸術は公共の財産とされ、その純粋性が強調されていた時代でした。
芸術作品は美術館や公共機関に寄贈されるべきもの、あるいは生涯のコレクションとして大切に保存されるべきものという考えが主流だったのです。
競売当日、外では著名な芸術家たちを含む50人以上のデモ隊が「芸術の商品化に反対する」と声を上げました。
「アーティストは自分の作品が転売されても一銭も受け取れない」と怒りをあらわにするアーティストもいました。

歴史を変えた1時間


ジャスパー・ジョーンズ《Two Maps》、ホイットニー美術館

こうした抗議をよそに、競売場は超満員となりました。
開始から1時間もたたないうちに、50点すべての作品が売却されました。最終的な総売却額は220万ドル(現在の価値でいえば1200万ドル)に達し、当時の美術品オークションとしては記録的な金額となりました。
最も衝撃的だったのは、スカル夫妻が収集した作品の価格上昇率でした。
彼らがラウシェンバーグから直接900ドルで購入した作品は、100倍に近い8万5000ドルで落札されました。
サイ・トゥオンブリーの作品は、750ドルで購入したものですが、50倍以上となる4万ドルで落札されました。
ジャスパー・ジョーンズの作品は、スカル夫妻が購入時には1万ドルでしたが、なんと24万ドルで落札されました。当時の現代アート作品としては記録的な高額です。
競売後、スカル夫妻は購入価格と販売価格の差益を公表し、現代美術が極めて収益性の高い「投資商品」であることを証明してみせました。
これは美術界に衝撃を与え、芸術作品の商品化と投資対象化という新しい時代の幕開けとなりました。

「アートマーケット」時代の到来

スカル・オークション以降、芸術作品は百貨店の商品のように扱われるようになりました。
カタログに羅列され、広告され、販売促進の対象となる「商品」へと変貌しました。
この変化は現代美術市場の基盤を形成し、今日に至るまで続いています。
歴史的に見れば、産業革命と新興ブルジョワジーの台頭によって、芸術は貴族やエリート層の独占物から解放され、より多くの人々がアクセスできるようになったといえます。
これは芸術の民主化という意味では前進でしたが、同時に芸術の商品化と金融化という新たな問題も生み出しました。
スカル・オークションから半世紀が経った今日、芸術と商業の関係はますます複雑になっています。
私たちのような画商やアート・ギャラリーも芸術の商業化の一端を担う存在ですから、芸術のあり方について日々考え続けています。

翠波画廊では、世界に一点の貴重な肉筆作品から比較的手頃な版画作品まで幅広く取り扱っています。
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