シュルレアリスム絵画落札価格ランキング【2020年版】
~1位はダリかミロかマグリットか?
2020年3月1日現在、箱根のポーラ美術館は企画展『シュルレアリスムと絵画―ダリ、エルンストと日本の「シュール」』展を開催しています(新型肺炎で騒がしい現在ですが、ポーラ美術館は開いています)。
同展は、20世紀の最大の芸術運動の一つである「シュルレアリスム」がどのように生まれたのか、またそれが日本に伝わって「超現実主義」と呼ばれ、やがて「シュール」という流行語が生まれた背景にまで視野を広げています。
実際、私たちは日常的に「これはシュールだね」という表現を使いますし、その感覚を受け入れています。
シュルレアリスムほど、日本で一般的に普及した芸術運動はないでしょう。
今回はシュルレアリスム絵画の人気作家を紹介します。
2019年に最も高額で落札されたシュルレアリスム絵画は?
2019年にオークションで高額落札されたシュルレアリスム絵画トップ10は、たった2人の画家によって占められました。
ルネ・マグリットとジョアン・ミロです。
最も高額で落札された作品は、マグリットが1964年に描いた≪Le lieu commun≫で、その価格は約2440万ドルになりました。
この価格は、同じく2019年に落札された奈良美智≪ナイフ・ビハインド・バック≫の約2490万ドル(日本人作家最高価格)に匹敵するものです。
2位もマグリット≪Le seize septembre≫(1957年)で、落札価格は約1960万ドルでした。
3位はミロ≪Peinture (L’Air)≫(1938年)で、落札価格は約1520万ドルになりました。
2019年に高額落札されたシュルレアリスム作品が、マグリットとミロの2人によって占められているという事実は、この2人の近年の人気の高さをうかがわせるものです。
シュルレアリスムの人気作家とは?
2019年に限らず、シュルレアリスム絵画の落札価格オールタイムトップ20を見ても、マグリットとミロの2人は大人気です。
なんと20作品中、マグリットが5作品、ミロが11作品を占めています。残りの4作品はサルバドール・ダリとマックス・エルンストによるものです。
シュルレアリスム絵画のオールタイム価格記録の1位は、2012年に落札されたミロ≪Peinture(Etoile Bleue)≫(1927年)で、その価格は約3700万ドルになります。
2位もミロで、約3150万ドル、3位はマグリットで約2680万ドルになります。
このように見ると、4人の中では、歴史的に最も評価が高いのがミロで、近年人気が急上昇中なのがマグリット、そして安定した需要があるのがダリとエルンスト、と見ることができます。
この4人のシュルレアリスム画家はどのような関係だったのでしょうか。
年齢でいえば、1891年生まれのエルンストが最も年上で、2歳年下のミロ、7歳年下のマグリット、13歳年下のダリと並びます。
国籍でいえば、ミロとダリがスペインで、マグリットがベルギー、エルンストはドイツ出身です。
4人とも当時の芸術の中心地であるパリで活動し、フランスの詩人アンドレ・ブルトンのシュルレアリスム運動の影響を受けましたが、その期間はそれぞれです。
ダリはパリをしばしば訪問しましたが長期的に定住することなく、スペインを拠点に世界中を飛び回る生活を送りました。ヨーロッパ中を襲った第二次世界大戦中は8年間アメリカに避難しましたが、その後は再びスペインに戻りました。
1927年にパリに渡ったマグリットは、そこで3年間修業し、以降は母国ベルギーに戻って、ひっそりと絵を描き続けました。
1919年から約10年間パリで活動したミロは、1929年の結婚を機にスペインに戻りましたが、1936年のスペイン内戦をきっかけに再びパリに来て、1940年に第二次世界大戦の影響でまたスペインに帰国するなど、時局に翻弄されました。
もっと悲惨だったのがエルンストです。1921年から20年間もパリで活動していたエルンストでしたが、第二次世界大戦がはじまると敵国人として逮捕され、1941年にアメリカに亡命します。戦後の1949年に再びパリに戻ると、以降はフランス国籍を得て、死ぬまでパリで暮らしました。
没年はマグリットが最も早く1967年、エルンストが1976年、スペインの2人は長命で、ミロが1983年、ダリが1989年まで生きました。
マグリットとダリとミロの作風の違い
3人は同じシュルレアリスム絵画といっても、その作風は大きく異なります。
エルンストは、最もシュルレアリスム運動に忠実な画家でした。コラージュやフロッタージュやデカルコマニーといった、オートマティスム(自動記述)の技法を駆使して、現実を超える現実(シュルレアリスム)の世界を表現しようとしました
そう聞くと難解なように思えますが、実際に作品を見ると、後のポップアートにも通じるようなカラフルで幻想的で魅力のあるものばかりです。
マグリットは、筆致こそ古典的な具象絵画ですが、その絵はまるでトリックアートのような、実際にはありえない風景を描いており、空中に浮かぶ岩や、鳥の形の空などといったイメージは普遍的なシュルレアリスムのイメージとなっています。
何を描いているのかはすぐにわかるのに、よく見ると現実感がないというマグリットの絵は、オランダのエッシャーと並んで、後の商業デザインに大きな影響を与えました。シュルレアリスムの一般的な人気は、マグリットによるところが大きいでしょう。
ダリもまた人気の画家ですが、絵だけでなく画家本人のイメージが人気を得ていたことがマグリットとは異なります。
天を指すように固められたカイゼル髭と、オールバックになでつけられた頭髪、そしてギョロ目をひん剥いてこちらをにらむダリの肖像写真は、舌を出したアインシュタインの肖像写真と同じくらい有名です。
ダリの画風は、ハイパーリアリズムとでも言えるような写実的な技法を用いて、現実にはありえない幻想的な風景を描くものでした。チーズのように溶けた時計や、折れそうなほどに細長い脚を持つ象などは、ダリの絵に特徴的な不思議なイメージです。
写実的で幻想的な絵といえばマグリットと同じようにも感じられますが、ダリの絵が奇妙な物体を描いているのに対し、マグリットは物体そのものの実在すら疑われるような四次元的な絵を描いているところが異なります。
マグリットやダリが具象絵画を描いたのに対し、同じシュルレアリスムでも、ミロはほとんど抽象絵画といってもいいような不思議な絵を描きました。
といっても、よく見ると何を描いたのかがわかるときもあります。しかし、その線や色使いは、まるで子供が描いたようなシンプルで自由な発想に溢れていて、見る者の気持ちを浮き立たせます。
エルンストやダリを見ると、シュルレアリスム絵画とは荘厳で幻想的なものと早合点しそうになりますが、ミロが加わることでシュルレアリスムの世界が一気に広がります。
ポーラ美術館の『シュルレアリスムと絵画』展は4月5日までの会期になります。その後、4月23日からは企画展『モネとマティス―もうひとつの楽園』展が予定されています。こちらも楽しみですね。
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