スティック(STIK)の版画作品はなぜ人気?
オークションの価格や社会的な意義を分析
スティック(STIK)はイギリスのストリートアーティストで、シンプルで表情豊かな棒人間(Stick Figure)を世界中の建物に描くことで知られています。
スティックは過去にホームレスとして暮らしていた経験があります。彼がアーティストとして有名になった2011年にも、ロンドンのハックニー地区にあるホームレス専用ホステル「セント・マンゴ」にまだ住んでいました。
スティックのアートは、ホームレス生活からくる疎外感などといった個人的な経験を反映しており、作品には社会的・政治的なメッセージが込められています。
スティックはストリートアートだけでなく版画作品も発表していて、その中にはオークションで記録的な高値をつけた作品もありますが、その売上の多くは慈善活動に寄付されています。
今回は、スティックの版画作品の市場価値について探っていきます。
オークションで記録的な価格をつけた作品
スティックの版画作品は、長年にわたって価値を高めてきたため、投資先としても優れていると考えられています。
Artprice.comによると、2020年のスティックのオークションでの取引高は170万ドルで、2019年の150万ドル、2018年の90万ドルと比較して着実に上昇しています。
オークションにおける彼の最高額は、2020年10月にクリスティーズにて28万7500ポンド(約3900万円)で落札されたブロンズ彫刻《Holding Hands (maquette)》によって達成されました。
この手をつなぐ二人の棒人間の彫刻は、ハックニー評議会の公共彫刻プログラムのために、スティックが寄贈したものです。スティックは自分が住むハックニー地区のために多くの貢献をしています。
スティックの版画作品の市場規模は2017年から2022年までの5年間でおよそ10倍に拡大しました。それに伴い、版画作品の平均取引価格も278%アップ、つまり4倍近くに上昇しています。
社会的な活動が目立つアーティストなので、2020年のようにコロナ禍などで活動が制限されて露出が減ると低調になるのですが、2021年に劇的に持ち直しています。
出典:MyArtBroker
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ホームレス支援をするスティック
スティックの版画作品は、通常、彼のストリートアートプロジェクトに合わせての限定版か、もしくは慈善活動のための資金調達を目的として発行されます。
たとえば、2013年、スティックはホームレスの自立支援をするために発行されている雑誌ビッグイシュー誌のために付録としてリトグラフの版画シリーズ《The Big Issue》を発行しました。
ビッグイシュー誌とは、ホームレスでも販売できる雑誌です。街角でビッグイシュー誌を通行人に販売したホームレスは、その売上の半分を得ることができます。
ビッグイシュー誌は、ホームレス状態の人でも無理なくできる仕事を創造するために作られた雑誌です。日本版もあるので、買ったことがある人もいるでしょう。
このビッグイシュー誌は1991年にロンドンで生まれて全世界に広まったものです。
スティックの版画が付録としてつけられたビッグイシュー誌の号は、通常価格とほぼ変わらない2.5ポンドで販売されました。
ビッグイシュー誌は一般書店では入手できないため、版画が欲しいファンはホームレスから雑誌を買わねばなりませんでした。この試みはホームレスに対する偏見を取り除くのに役に立ちました。
スティックはより多くの雑誌が売れるように、4色のポスターを用意してランダムに雑誌に封入しました。
赤と青と黄と橙のポスターはそれぞれ発行枚数が異なっていて、赤と青は3万枚ありましたが、黄は1万枚、橙は5千枚しかありませんでした。そのため4色のポスターをすべて揃えたい人は雑誌を何部も買わねばなりませんでした。
スティックはさらに収集欲をあおるために、最初にすべての色のポスターを集めた人に、雑誌に封入する前の折り目のない赤ポスターに手描きのサインを入れてプレゼントすると約束しました。
また、ビッグイシュー誌を買ってくれた人のためにイギリス全土を回ってサイン会を行いました。
スティックがこのプロジェクトのために使った資金は1万ドルとも言われています。
発売から7年後の2020年には、スティックの版画ポスター付きの未開封ビッグイシュー誌は、定価2.5ポンドなのに1000ポンドで取引されていました。
4色のコンプリートセットとなると、5000ポンド近くになることもあります。
スティックのアメリカでのデビュー作品
翠波画廊で販売しているシルクスクリーン作品《Liberty》(リバティ)は、ストリートアート作品の発表に合わせて発行された限定版の版画です。
《Liberty》シリーズは、スティックが2013年にニューヨークで行ったリバティ・グラフィティを記念して5色のカラーリングでリリースした版画です。
「Liberty」とは「自由」を意味する英単語で、「The Statue of Liberty」といえばニューヨークの自由の女神像のことをさします。ですから、スティック《Liberty》も、自由の女神像と同じように右腕をかかげているのです。
ちなみにニューヨークにある自由の女神像は、アメリカ独立100周年を記念してフランスから贈られたものです。ローマ神話の自由の女神リベルタスがモデルになっていると言われていますが、同じ女神をモデルにしたものとしてドラクロワ《民衆を導く自由の女神》がよく知られています。右腕をかかげるポーズが同じですね。
一般に版画作品の価格は、刷部数、色調、状態、出所、需要など、いくつかの要因に左右されます。刷部数が少なければ少ないほど、価格が高くなります。
たとえば、《Liberty》は各色25部の限定生産でした。ですから5千~3万部刷られた《The Big Issue》のほうが高価になってしまうのです。
スティックは、今後も目が離せない現代アーティストの1人です。
Liberty © Stik, 2013
ドラクロワ《民衆を導く自由の女神》1830
翠波画廊では、スティックの作品を取り扱っています。
ぜひご覧になってください。
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