ポップアートがポップミュージックをつくった?
~ウォーホルとリキテンスタイン
令和の現在、大衆的な知名度のある絵画といえばストリートアートですが、昭和の後半にアメリカを中心として世界中で人気があったのはポップアートでした。
ポップアートは、もともとは大衆芸術(ポピュラー・アート)を短くした言葉にすぎませんが、ポップ(POP)!のはじけるような語感から、大衆文化をモチーフとする新しく勢いのある一連の芸術作品の概念として定着しました。
カラフルで派手で見応えのあるポップアートは、商業デザインにもよく使われて、誰の目にも馴染みのあるものになっています。
今回はポップアーティストの特集です。
キング・オブ・ポップアート
ポップアートといえば、誰もがまず頭に思い浮かべるのがアンディ・ウォーホルでしょう。 アメリカのポップアートの王様ともいえるウォーホルは、実はチェコスロバキア移民の両親のもとに生まれたスラヴ系で、生涯を通じて教会に通い続けたカトリック教徒でした。そのような傍流の生まれが、彼を芸術家に向かわせたのかもしれません。
当初は商業デザイナーとして堅実に暮らしていたウォーホルですが、同性愛者というプレッシャーもあり、窮屈な権威に反発するように現代アーティストを目指します。
ウォーホルが初期に取り組んだのは、スーパーマーケットに並んでいる商品のパッケージの模倣でした。これはアートという権威に対するウォーホルの反抗と見ることができます。
しかし、単なる反体制では大衆的な人気を得ることはできません。その後のウォーホルは、カラフルな色彩とセレブのイメージを利用して、さらに人目をひく作品づくりに挑戦しました。これには商業デザイナーの経験も生きています。
1982年(ウォーホル)
ウォーホルの作品で最も人気があるのは、派手な彩色を施した女優マリリン・モンローのシルクスクリーンの肖像画でしょう。
あまりに有名なウォーホルのモンローはアート界のイコンとしてさまざまなパロディーの対象になっています。近年では、バンクシーが現代のファッションモデルであるケイト・モスに置き換えて、似たような作品を制作しているほどです。
大衆的な人気を得た後年のウォーホルは、セレブの肖像画を注文に応じて作っていました。ビリー・スクワイアのアルバム・ジャケットなどにその仕事の片鱗を見ることができます。
漫画に影響を受けたポップアート
1983年(リキテンスタイン)
アンディ・ウォーホルとともにアメリカのポップアートの双璧として知られているのが、ロイ・リキテンスタインです。
ウォーホルよりも5歳年上のリキテンスタインがポップアートに取り組んだのは、実はウォーホルよりも前になります。
逆に言えば、模倣の天才アンディ・ウォーホルが、リキテンスタインをみならって、ポップアートを完成させたと言うこともできます。
ロイ・リキテンスタインは、自分の子どもが漫画に夢中になっていることから、大衆的な漫画の絵をアートに取り入れることを思いつきました。
太い輪郭線の枠内を赤や青や黄色の原色で塗りつぶしたリキテンスタインの絵は、強烈なインパクトで、アメリカのポップアートの代名詞となりました。
リキテンスタインの絵は、70年代のダンスミュージックの音楽プロデューサーであるボビー・オーランドのシングル『I Cry For You』のジャケットなどで見ることができます。
ポップアートの栄光と盛衰
1991年(コスタビ)
芸術運動としてのいわゆるポップアートは1950年代から60年代にかけて隆盛したものですが、その表現力の強さゆえに、70年代以降は商業デザインに流用され、大量消費の対象になりました。
ウォーホルやリキテンスタインの制作したアート・ジャケットは、大量消費される商業デザインとしてのポップアートでしたが、その流行も90年代半ばから下火になりました。
70年代から80年代にかけて流行した商業デザインとしてのポップアートの最後の打ち上げ花火となったのが、マーク・コスタビと彼のデザインしたガンズ・アンド・ローゼズのジャケットです。
ガンズ・アンド・ローゼズといえば、ウォール・ストリート・ジャーナル誌が特集した「史上最も人気のあるロックバンド」のベスト10に入るビッグ・バンドです。
そのガンズ・アンド・ローゼズが躍進するきっかけとなったのが、1991年の2枚組アルバム『ユーズ・ユア・イリュージョン』です。
1991年(コスタビ)
アルバムのアートワークに起用されたのは、当時、現代アーティストとして絶頂期にあったマーク・コスタビでした。ジャケットの左下に小さくサインも見えます。
鮮やかな赤と青の2色カラーの2枚のアルバムは、この年、全世界を席巻し、ガンズ・アンド・ローゼズとマーク・コスタビの名前をおおいに上げました。
しかし、ポップアートの時代は流行が目まぐるしく変わる時代でもあります。一時の流行が去るとともにコスタビの人気も落ち着いて、日本では名前を目にすることが少なくなりました。
2000年代のポップアート
(My Ultimate Summer Of Love Mix)』
2007年(ジェームス・リジィ)
芸術運動としては次の流行に席を譲ったポップアートですが、その人気は根強く、影響を受けたアーティストがその後も活躍を続けました。
例えば、存命作家として非常に高い評価を受けているデイヴィッド・ホックニーやジュリアン・オピーの作品には、明らかにポップアートの影響が見て取れます。
日本で言えば、草間彌生のかぼちゃのドット(水玉)、村上隆のアニメ×アート、奈良美智の描く女の子なども、ポップアートの系譜に位置付けることができます。
ここまで見てきた中でわかるように、ポップアートの一つの特徴はカラフルで彩度の高い画面です。
そして色彩の面でポップアートらしさをよく受け継いでいるのが、よく純粋なポップアーティストと称されるジェームス・リジィです。
ジェームス・リジィは、その明るくてポップな作風から、ポップミュージックのアルバム・ジャケットに起用されることの多い画家でした。
残念ながら2011年に61歳の若さで亡くなってしまいましたが、その楽しげな作風は最後まで変わりません。 死の4年前の2007年には、フランスの人気DJボブ・サンクラーのアルバム『サウンズ・オブ・フリーダム』のためにジャケットを描き下ろしました。
ボブ・サンクラーはたいへん喜び、このジェームス・リジィの絵を使った1分間のアニメーション動画を作成して、ユーチューブに公開しています。
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