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ピカソもセザンヌもマネの真似!
《草上の昼食》のオマージュとパロディを一挙紹介

エドゥアール・マネ《草上の昼食》1862-1863

1863年にフランスのサロンに出品されたマネ《草上の昼食》は、それまでタブーとされていたリアルな人間の女性のヌードを描いてスキャンダルを巻き起こしました。
印象派ほどに粗い筆触を持たないマネが印象派の兄貴分として慕われたのは、常識に挑戦する革命精神からです。
《草上の昼食》が巻き起こしたスキャンダルがあまりに大きかったために、フランスの画家たちは、その後も作品を通じて《草上の昼食》に言及し続けました。
こうして現代の『リサとガスパールのピクニック』まで続く、《草上の昼食》の引用の歴史が作られたのです。

ブーダンがまっさきに真似をした

ウジェーヌ・ブーダン《草上の昼食》1866年

最初の例として知られるのは、モネの師匠として知られるウジェーヌ・ブーダンが描いた《草上の昼食》です。
マネの家族をモデルに描かれたブーダンの《草上の昼食》は、着衣の女性2人に男性一人と男女比が逆になっていますが、モデルになったのがマネの家族ですし、ポーズを見ればマネの《草上の昼食》を強く意識したことがわかります。
ちなみに男性モデルを務めたのは、後に印象派の女性画家ベルト・モリゾと結婚したことで知られる、マネの弟のウジェーヌ・マネでした。

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モネがマネの真似

クロード・モネ《草上の昼食(習作)》1866年

ブーダンに絵を習ったことのあるモネも、同じ年に自らの《草上の昼食》を描きました。
ブーダンと同じく着衣の男女を描いたモネの《草上の昼食》は、男性の黒づくめの服装や投げ出された足などに、マネの《草上の昼食》との類似点を見出すことができます。
モネ《草上の昼食》には習作と本作の2つがあり、本作のほうは横幅が6メートルにも及んでいたため、後に2つに切断されてしまいました。

 

ちなみに、モネと並ぶ印象派の巨頭ルノワールは《草上の昼食》を描いてはいませんが、後年にルノワールの次男である映画監督のジャン・ルノワールが、映画作品『草の上の昼食』(原題は絵画と同じ《 Le Déjeuner sur l’herbe》)を撮影しています。もちろんマネの絵を意識したものです。

ジャン・ルノワール『草の上の昼食』(DVD)

女遊びの部分を真似したティソ

ジェームズ・ティソ《四人組》1870年

1870年のフランスの画家ジェームズ・ティソによる《四人組》も、明らかに《草上の昼食》を意識して描かれた作品です。
しかし、これらの《草上の昼食》のオマージュ作品群は、マネのオリジナルと比べて大きな違いがあります。それは、登場人物がきちんと服を着ていることです。
マネのオリジナルで問題とされたヌードを描かないことで、一般に受容される作品を目指したのですが、そもそもオマージュ作品を描いている時点で、マネが描いたヌードに対する賛意があると考えられます。
ティソの絵は服こそ着ていますが、着衣の女性の胸に回された男性の手など、マネの絵と同じように当時の金持ちが娼婦を買って女遊びをする様子だと考えられます。

あのセザンヌもマネの真似

ポール・セザンヌ《草上の昼食》1871年

続いて、1871年にはセザンヌが《草上の昼食》を描きました。
後に一緒に印象派展に参加するセザンヌとモネは、先輩画家としてマネを慕っていました。
彼らがそれぞれ《草上の昼食》を描いたのは、批判や中傷にさらされていたマネを応援するという意味があったのでしょう。
セザンヌ《草上の昼食》には、セザンヌらしい構図の妙がうかがえますが、セザンヌ自身をモデルにした手前の男性のポーズや、奥に座る女性のあごに添えられた手などは、マネのオリジナルを意識したものでしょう。

アメリカ人もマネの真似

ジュリウス・スチュワート《木陰の昼食》1895年

マネが《草上の昼食》を描いたのは1863年です。
驚いたことにそれから30年が経ってもまだその影響は消えませんでした。
1895年には、パリで活躍したアメリカ人画家のジュリウス・ルブラン・スチュワートが、マネを意識して《木陰の昼食》を描いています。

ついにはピカソもマネの真似

ピカソ《草上の昼食》1960年

マネの《草上の昼食》は、絵画の古典として今では教科書にも載っています。
そして古典絵画をリメイクすることに熱中していた晩年のピカソも、何枚もの《草上の昼食》を描きました。
初期に描かれたピカソの《草上の昼食》は、あからさまにマネの構図を模倣しています。マネのオリジナルで問題となったヌードをおそれないところが、いかにもピカソです。

ポップカルチャーもマネの真似

The New Jazz Orchestra
『Le Déjeuner Sur L’Herbe』1969年

描かれてから100年を経て、すっかり大人の教養と化したマネ《草上の昼食》は、美術界を超えて、ポップカルチャーでも引用されるようになりました。
イギリスのジャズのビッグバンドであるニュー・ジャズ・オーケストラは、1969年のアルバム『草上の昼食』のカバーで、マネの《草上の昼食》を写真で再現しました。
アルバムのタイトルからしてそのまま『草上の昼食』ですから、教養のある人にはすぐにそれとわかるものでした。

再び女性のヌードが問題視された

Bow Wow Wow
『See Jungle! See Jungle! Go Join Your Gang Yeah, City All Over! Go Ape Crazy!』1981年

さらに1981年には、イギリスのニューウェイブ・バンドのバウ・ワウ・ワウのデビューアルバム『ジャングルでファン・ファン・ファン』のアートワークにも《草上の昼食》の構図が使われました。
バウ・ワウ・ワウは、セックス・ピストルズの仕掛け人として知られるマルコム・マクラーレンがプロデューサーとして作りあげたグループです。
マーケティング優先で作られたグループですから、アルバム・ジャケットも扇情的な効果を狙って、女性ボーカリストのヌードを使用した《草上の昼食》のパロディになりました。
ところが、アジア系女性ボーカリストのアナベラ・ルーウィンが撮影当時まだ14歳だったことから、彼女の母親が激怒して販売差し止めの提訴をする騒動になりました。
結局、イギリスではこのカバーのままの発売となりましたが、アメリカなど一部の国ではジャケットが差し替えられました。
このような騒動も広告宣伝となり、バウ・ワウ・ワウは人気が出て、日本ではCMにも出演するなど、抜群の知名度を誇りました。

村上春樹もマネの真似

村上春樹・フジモトマサル『村上さんのところ』新潮文庫
最後に紹介するのは、ノーベル文学賞に最も近いと言われる日本の人気作家、村上春樹のブックカバーです。

文庫本『村上さんのところ』は、村上春樹が4カ月間の期間限定でホームページを開設し、世界中から寄せられた質問に答えたものをまとめた書籍です。。
フジモトマサルが描く、猫と羊に挟まれてにこにこと微笑む村上さんの姿は微笑ましいものですが、元の絵画が持っていた毒気をも隠し持っていて、村上春樹の作品イメージによく合っています

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