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なぜNFTが注目されているのか?
~アートの世界から贋作を放逐する試み

NFTオークションで、デジタルのアート作品がよく売れています。
先日は、日本の小学3年生が夏休みの自由研究として、iPadで描いた絵をNFTマーケットに1点2300円で出品してみたところ、1週間ほどで売れたそうです。 それだけならよくある話かもしれませんが、この話には続きがあります。
Zombie Zoo Keeper(ゾンビ飼育員)というアーティスト名で描いた彼の絵は、8歳の少年が描いているということで人気となり、購入した人が二次市場(セカンダリー・マーケット)にも出品して数万円で売れているのだそうです。
NFTでは所有者の履歴も、二次売買の履歴もたどることができますから、二次市場での販売に対しても、アーティストであるZombie Zoo Keeperさんには手数料が入ってきます。
8歳の少年の口座には、9月時点で売り上げとして約80万円が記録されているそうです。
なぜこのようなことが起きるのでしょうか?

 

アーティストがNFTで稼ぐ時代に

デジタルアートをNFTマーケットに出品して稼ぐ少年はZombie Zoo Keeperさんだけではありません。
ロンドンに住む12歳のベンジャミン・アフメドさんはWeird Whales(おかしなクジラたち)と名づけたNFTアートシリーズで、すでに約4000万円を稼いでいます。
二次市場でも流通するほどに人気が出れば、価格がどんどん高騰していくのはアートの世界と同じです。
ただしNFTが面白いのは、いままさに市場が始まったばかりであるために、何が人気になるかがわからなくて、誰にでもチャンスが開かれているところでしょう。
Zombie Zoo Keeperさんの絵は二次市場で240万円で売れたそうですし、VRアーティストのせきぐちあいみさんの作品はNFTオークションにて約1300万円で落札されました。
リアルの世界とは異なる市場があるのもNFTマーケットの特徴です。
一方で、NFTマーケットに作品を出品してみたけれどもほとんど売れないという人も少なくありません。

アートの世界と同じく、ただ作品の質が高ければいいわけではないのです。実は、Zombie Zoo Keeperさんの母親は音楽活動をしているアーティストの草野絵美さんで、息子の自由研究を始める前に、自分の作品をNFTマーケットに出品して約9万円で売ったこともあるそうです。
そして、Zombie Zoo Keeperさんの作品を出品するにあたっても、インスタグラムやツイッターなどSNSの専用アカウントを作るなど広告宣伝にも気を配りました。
いちど話題になって、欲しいと思う人が増えれば需要と供給の関係から価格は上がっていきます。なにしろNFTとは、コピーのできるデジタルアートでも、その作品の所有者を確定できるシステムだからです。
NFTという発明の最大の特長は、デジタルの世界に所有権を設定したことでした。
アートの価格が高騰するのは、この物理世界にオリジナルがたった一点しか存在しないからです。
デジタルアートの場合はオリジナルとコピーの区別ができないので、これまでは価格があがりませんでした。NFTによって、オリジナルのデジタルアートが初めて存在するようになったのです。

エルミタージュ美術館のNFT

ロシアのエルミタージュ美術館といえば、フランスのルーブル美術館、アメリカのメトロポリタン美術館とともに世界三大美術館の一つとして知られています。
とはいえ、コロナ禍以来、美術館の入場者も減少していて、運営は楽ではありません。
そんなエルミタージュ美術館が考えたのが、流行のNFTで所蔵作品のデジタルコピーを販売することでした。
「Your token is kept in the Hermitage(あなたのトークンがエルミタージュで保管されます)」と名づけられたこのプロジェクトでは、同美術館が所蔵する以下の5枚の名画をデジタル化して、正当なデジタルコピーであることを示すNFTをつけて販売されました。
1枚の作品に対してNFT付きのデジタルコピーは2つ作られ、1つはオークションで販売され、1つはエルミタージュ美術館が保管します。もちろん現物の絵画もエルミタージュ美術館で保管されています。
通常、ひとたび美術館に所蔵された名画がアートマーケットに出ることはほぼありません。しかしNFTによってデジタルコピーの販売ができるようになれば新たな市場開拓にもなるとして、エルミタージュ美術館の試みは大きく注目されました。
エルミタージュ美術館がオークションに出品したNFT作品は以下の5点です。
落札結果はどのようなものだったでしょうか?

 

ジョルジョーネ『Judith』

レオナルド・ダ・ヴィンチ『Madonna Litta』

フィンセント・ファン・ゴッホ『Lilac Bush』

ワシリー・カンディンスキー『Composition VI』

クロード・モネ『Corner of the Garden at Montgeron』

デジタルコピーもNFTなら売れる?

結果から言えば、2021年9月7日に終了したオークションでは、5点合計で44万ドル(約4800万円)の売り上げになりました。
最も高額で落札されたのはダ・ヴィンチ《Madonna Litta》で、約1650万円になりました。そのほかの作品は約700~900万円だったそうです。
現物を美術館が所蔵したまま、2点作ったデジタルコピーの1点だけを販売するという方式ですから、上々の売上だったと言えるでしょう。
しかしエルミタージュ美術館のミハイル・ピオトロフスキー館長はプレスリリースで「財政問題に対処するためにトークンを利用するつもりはない」と述べていて、「NFTは所有権をもたらし、私たちのケースでは偉大な美術館との繋がりを感じさせてくれる」と、アートが身近になることの効用について語っています。
エルミタージュ美術館の後を追うように大英博物館も葛飾北斎のデジタル画像など200点以上のNFTを販売することを発表しました。デジタル作品をNFTとして「正式に」所有することがアート市場の新たなトレンドとして定着しそうです。


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