モネの《睡蓮》が神経衰弱になった
~きみはスイレンとスイレンを見分けられるか?
2022年上半期の美術品オークションで最もよく売れた画家は、印象派のクロード・モネです。その売上高は半期で4億5000万ドルを超えました。
5月には代表作の一つである《国会議事堂、日没》が、7596万ドル(約99億円)で落札されています。
しかしモネといえば多くの人がイメージするのは、やはり《睡蓮》です。
モネは自宅の庭に睡蓮を浮かべた池を造り、その絵を250枚も描きました。
枚数が多いおかげで、日本でも国立西洋美術館やポーラ美術館をはじめ、モネの≪睡蓮≫の絵が10枚近く所蔵されています。
このモネの《睡蓮》の絵がそれぞれよく似ていることを利用した「神経衰弱」ゲームがあるのをご存じですか?
クロード・モネ《国会議事堂、日没》7596万ドルで落札
クロード・モネ《睡蓮》国立西洋美術館所蔵
神経衰弱は記憶力を試すゲーム
トランプの「神経衰弱」といえば、52枚のカードを使った記憶ゲームとして有名です。
知らない人はいないと思いますが一応ルールを説明しておくと、トランプのカードを裏向きで並べて、自分の番になったらその中から2枚を表にひっくり返して、同じ数字であればそのペアを得点として獲得するものです。違う数字だったら次の人の番になります。他人が開いたカードの場所と数字をどれだけ記憶できるかが勝負の分かれ目です。
このトランプの「神経衰弱」ゲームですが、記憶力を鍛えるなどの教育効果があるので、海外ではメモリーゲームとかマッチングゲームといった名前で、まだ数字や文字の読めない幼児向けに、イラストを使ったカードの知育玩具として販売されています。
子どもに大人気のエリック・カールの絵本『はらぺこあおむし』のイラストを使ったメモリーゲームなどが、日本でも販売されています。
ダリやピカソの絵で神経衰弱ができる
2枚1組のイラストのカードのペアがたくさんあればメモリーゲームは作れます。
となれば、絵画資産をたくさん持っているアート業界が黙っているわけはありません。
かくして、さまざまな画家の神経衰弱ゲームが作られました。
海外にはピカソ、ダリ、ゴッホ、モネ、セザンヌ、クリムトなどの神経衰弱ゲームがあって、東京都美術館などのミュージアムショップで購入することができます。
以前は36組のカードが入ったPIATNIK社のバージョンが流通していましたが、今は20組のカードが入った小箱のバージョンをよく見かけます。
『モネ 神経衰弱ゲーム』
モネの≪睡蓮≫は見分けがつかない?
モネの神経衰弱ゲームにさらにひとひねり加えたのがゲームデザイナーの中村誠さんです。
中村さんはモネの絵の中から≪睡蓮≫だけを取り出して、非常に判別がしづらく、場所を覚えるのが困難な、難度の高い神経衰弱ゲームを作り上げました。
その名も『スイレントスイレン』(睡蓮と睡蓮)。「サイレントサイレン」というガールズバンドの名前のもじりになっています。
一般に神経衰弱ゲームは、カードの場所を記憶できればできるほど勝利に近づきます。そのためには、めくられたカードが何であるかを視覚的にとらえる必要があります。逆に、カードごとの差異が明確でないと記憶が難しくなります。
『スイレントスイレン』は、どのカードをめくっても「睡蓮」なので、カードを覚えるのが非常に困難です。たとえば、写真に見えている3枚のカードは、すべて異なる絵柄です。
実際にプレイすると、「たしか、このへんにあったはず」と思ってめくっても微妙に違うカードが現れて、いつまでたってもペアを作ることができません!
ルールシートには「真のあそびかた」として次のように書かれています。
「このゲームは実は協力ゲームです(協力しないとゲームが終わらないかも!?)。」
協力ゲームとは、みんなで協力してゲームのクリアをめざすゲームジャンルです。
通常の神経衰弱は誰が1位になるかを競うことが多いのですが、このゲームは競っているとまったくゲームが終わらないので「そのカードはここにあったよ」とか「濃い青のカードはこっちに置こう」とか、自然と他のプレイヤーの協力をするようになっていきます。
いつしか、自分が勝つことよりもみんなで協力してゲームを終わらせることが目的となって、最後はクリアできたことの達成感をみなで味わえるようにデザインされているのです。
中村さんはこのゲームを自費で作って、インディーズゲームのイベント「ゲームマーケット2021秋」で販売しました。
中村さんは過去に、絵ではなく文字のカードで神経衰弱ゲームを作ったこともあります。
日本人のよくある名前の一つ「渡辺」さんに、「渡邉」とか「渡邊」とか紛らわしいナベの漢字が24種類もあることに着目した『渡る世間はナベばかり』(アークライト)です。テレビ番組などで紹介されたので、ご存じの方もいるかもしれません。
その姉妹版として、「斉藤」とか「齊藤」とか「斎藤」とか「齋藤」といったさまざまなサイの漢字を24種類集めて神経衰弱ゲームにした『オールサイ藤ニッポン』(アークライト)もあります。
個人的には、絵の違いを記憶する『スイレントスイレン』よりも、漢字の違いを記憶する『渡る世間はナベばかり』のほうが難しかったです。
中村誠『オールサイ藤ニッポン』(アークライト)
翠波画廊では、睡蓮を描く、現代の印象派、ギィ・デサップ作品のご用意がございます。
作品はこちらよりご覧ください。
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