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フランスの女流画家といえば?
~18世紀のエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランから20世紀のローランサンまで

3月8日は女性の日です。1904年3月8日にニューヨークで起きた、婦人参政権のデモを記念して、国際女性デーが提唱されたのです。
2018年3月8日も、スペインで約540万人が参加した、男女平等を求める2時間のストライキがありました。
絵画の世界でも、かつては女性が差別されていました。正統な歴史画では男性の裸体が必須だったために、女性は絵画教育のアカデミーから締め出されていたのです。
それでも、個人としての技量を背景に、名を挙げた女性画家はわずかながら存在しました。
また、19世紀以降アカデミーが女性に徐々に門戸を開くと、数多くの女性画家が生まれました。
今回はフランス近代絵画における女性画家の活躍を見てみましょう。

 

18世紀フランスで最も有名な女性画家は、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842)です。当時の女性画家の例にもれず、エリザベートも画家の父親から絵を習いました。女性はアカデミーに入学できなかったので、身内からしか学ぶ機会がなかったのです。
裸体を描くことが許されなかった女性画家の常として、エリザベートは肖像画家として身を立てました。そして王妃マリー・アントワネットの肖像を描いて気に入られたことが、エリザベートの地位を確かなものにしました。革命で王妃が処刑された後は他国に亡命しましたが、外国でもその腕は高く評価されました。

エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン「自画像」1790

 

19世紀フランスで最も有名な女性画家は、ローザ・ボヌール(1822-1899)です。ローザは、女性画家として初めてフランス政府からレジオンドヌール勲章を受けるなど、女性の地位を高めました。
画家であった父に絵を学び、サロンに参加するようになったローザは、すぐにその技量を認められて何度もメダルを獲得し、国際的にも有名になります。
同性愛者だったローザは女性のパートナーとともに暮らしたり、男性の格好をしたりと当時の規範を逸脱していましたが、特別の才能を持つ芸術家として、その行動も許容されました。

ローザ・ボヌール「ニヴェルネの耕作」1849

 

19世紀フランス近代絵画といえば、印象派の誕生が有名です。その印象派展には、女性画家が3人参加していました。
1人目は、地元の画家の私塾で学んだマリー・ブラックモン(1840-1916)です。マリーは画家のフェリックス・ブラックモンと結婚し、夫婦で印象派展に参加しました。
2人目は、裕福な家に生まれ、お嬢様の手習いとして絵を学んだベルト・モリゾ(1841-1895)です。美しかったベルトはマネのモデルを務め、マネの弟と結婚しました。
3人目は、フランス系アメリカ人で、パリに絵の勉強に来たメアリー・カサット(1844-1926)です。カサットはピサロに絵を学び、印象派の絵をアメリカに紹介しました。
4人目として、印象派展には出品していないものの、マネの唯一の弟子だったエヴァ・ゴンザレス(1849-1883)も、印象派の女性画家に数えられることがあります。

 

ベルト・モリゾ「夏の日」1879

 

メアリー・カサット「ボックス席で真珠のネックレスをつけた女性」1879

 

やや時代は下って、19世紀後半に名を残したのが、世間的にはモーリス・ユトリロの母として知られるシュザンヌ・ヴァラドン(1865-1938)です。貧困層の私生児として生まれたシュザンヌは、やがて絵画モデルとして働くようになり、ルノワールやロートレックの絵にその姿を何度も残しています。

そのうちに自らも絵を描くようになったシュザンヌは、その技量をロートレックやドガに見込まれて、フランス国民美術協会初の女性会員になりました。その一方で、私生児として産んだユトリロのことはなかなか認めず、絵も教えなかったそうです。

 

シュザンヌ・ヴァラドン「自画像」1898

 

次に、20世紀前半のフランス女性画家といえば、マリー・ローランサン(1883-1956)です。やはり私生児として生まれたマリーですが、この頃にはアカデミーも女性の入学を認めていたために、高校卒業後に普通に画家を志します。アカデミーでブラックと知り合いになったマリーは、ブラックを通じてピカソやアポリネールなど、当時の前衛芸術運動(キュビスム)の仲間になりました。その独自の作風から、さまざまな外国人画家の集まりであるエコール・ド・パリの一員に分類されています。

 

マリー・ローランサン「ココ・シャネルの肖像」1923

 

20世紀後半のフランス女性画家として名声を博したのが、ニキ・ド・サンファル(1930-2002)です。1930年生まれのニキは草間彌生と一歳違いです。ニキはフランス人の父とアメリカ人の母との間に生まれて、3歳のときにアメリカに移住したので、育ったのはアメリカです。しかし、絵を描き始めたのは、22歳でパリに戻ってからなので、画家としてのキャリアはフランスで積んでいます。
正式な美術教育を受けていないニキですが、絵の具を仕込んだキャンバスをライフルで打つ射撃絵画などのパフォーマンスが認められて、ヌーヴォー・レアリスムの一員になると、斬新な発想で現代アートの旗手となりました。

男女平等がうたわれる現在、草間彌生を始めとして女性画家の数はだいぶ多くなりました。女性の地位向上のために尽力した先達に敬意を表しつつ、今後の新しい女性画家の登場に期待しています。

 

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