日本の「現代美術」を知っていますか?
東京都現代美術館が日本現代美術をまとめて見られる展覧会を開催!
いわゆる「現代アート」としてメディアで話題になるのは海外の作家が多く、日本の「現代美術」は、ごく一部の作家を除いてあまり知られていません。
そのような状況を打破したく、東京都現代美術館で2024年11月10日(日)まで開催中の「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」を見に行ってきました。
なかなか見られない作品が多く、圧倒的なボリュームと迫力で必見の展覧会です。
アートコレクター高橋龍太郎とは何者か?
今回の展示は「高橋龍太郎コレクション」と銘打っています。
高橋龍太郎さんは、日本で一、二を争う現代アートのコレクターです。
本職は精神科医ですが、アートコレクターとしても有名です。
その著書『現代美術コレクター』(講談社現代新書)によれば、若い頃にアートにあこがれて映像作家になろうとしましたが、才能がないことをさとって医師になったそうです。
その後、コレクターとしてアートにかかわる道もあると気づき、33歳のときに初めて買った現代アート作品が、合田佐和子の小さな絵画《グレタ・ガルボ》でした。
そこから始まった高橋龍太郎コレクションは、1997年から草間彌生、奈良美智、会田誠、山口晃、加藤泉といった作家を中心に徐々に拡大していきました。
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海外でも展覧会が開催されたほどのアートコレクション
© SOTSU・SUNRISE Courtesy of ANOMALY
高橋龍太郎コレクションが転機を迎えたのは2004年のことです。
自らのクリニックの空いているワンフロアに置いていた作品数が200点を越えて、収納しきれなくなったのです。
そこで、使われなくなった印刷工場の、それぞれ50坪もある3階と4階を借りて、倉庫と展示スペースと貸しギャラリーに改装して始めたのが、名高い神楽坂のアートスペース「高橋コレクション神楽坂」です。
コレクションの総数が500点を越えてからは、美術館での展示を打診されるようになりました。
2008年には全国7か所の美術館を巡回した「ネオテニー・ジャパン─高橋コレクション」展が開催されています。
こうして全国的に有名となった高橋龍太郎コレクションの総数は、今では3500点を越えています。
今回の東京都現代美術館での展示は、2020年に現代アートの振興と普及への多大な貢献から文化庁長官表彰を受賞した高橋龍太郎さんの集大成といっていいでしょう。
コレクションの秘訣は、作家が有名になる前に買うこと
海外でも通用する日本の現代美術作家トップ3といえば、草間彌生、村上隆、奈良美智をあげる人が多いでしょう。
これらの作家の良い作品をいま手に入れようとすると、かなりの予算が必要になります。
高橋さんは、1960年代に草間彌生がニューヨークで活動していた頃からのファンで、彼女が本格的に再評価される前の1998年から作品の購入を始めています。
そのため、高橋龍太郎コレクションには、質量ともに膨大な草間彌生の作品群があり、撮影禁止のため掲載はできませんが、今回の展示でもその魅力を存分に堪能することができました。
奈良美智の作品も当時はまだ比較的購入しやすい価格であり、数多く高橋龍太郎コレクションに収蔵されています。
日本の現代美術の極北ともいえる会田誠
高橋龍太郎コレクションの3本柱といえば、草間彌生と会田誠と山口晃になるでしょう。
今回の展示の白眉は、会田誠の代表作ともいえる《 紐育空爆之図 (戦争画RETURNS)》です。
「現代美術とは何か」と問われたときの回答は人によって異なるでしょうが、四肢を切断された少女の図など物議を醸すことで有名な会田誠の作品は、「現代美術の枠組みでなければ見られないものがある」という意味で、一つの回答を示しています。
村上隆は現代美術の枠組みを広げてくれる
会田誠とは別の方向性で、現代美術の最先端を指向するのが村上隆です。
村上隆は「自分は日本では嫌われている」と何度も繰り返すように、何でもありと思われがちな現代美術の中でも異端の道を歩んでいます。
村上隆が異端視されるのは、その著書『芸術起業論』(幻冬舎)でも説かれたように、芸術をビジネスにたとえてしまうところでしょう。
しかしそれは、自らのアートスタジオであり、膨大な数のスタッフをかかえる有限会社カイカイキキの経営者として、スタジオを運営していくために必要という側面もあります。
スタジオでの多人数制作をもっぱらとして、現代美術の商業化をすすめる村上隆は、日本のジェフ・クーンズ、もしくはアンディ・ウォーホルともいえる存在です。
もし村上隆がいなかったとしたら、日本の現代美術がここまで注目を集めることはなかったでしょう。
翠波画廊では、日本の現代美術作品を取り扱っています。
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