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ジェームス・リジィとトム・トム・クラブ
~トーキング・ヘッズからのスピンオフで大人気

死後10年が経とうとしている現在も、根強い人気を誇るジェームス・リジィ。 このジェームス・リジィが若い頃に、その名を広める役目を負ったのが、ポップ・バンドのトム・トム・クラブです。
トム・トム・クラブのデビュー・アルバム『Tom Tom Club』(1981)は、全米で50万枚以上を売り上げるゴールド・ディスクとなり、その表裏のジャケット全体を埋め尽くすように隙間なく描かれたジェームス・リジィの絵も、話題の的となりました。
アイデアを詰め込んだジェームス・リジィの絵は、ダンサブルなトム・トム・クラブの音楽にぴったりフィットしたので、続くシングルやアルバムのジャケット・デザインもそのままジェームス・リジィが担当しました。
今回は、ジェームス・リジィがトム・トム・クラブで手掛けたジャケット・デザインをご紹介します。

トム・トム・クラブの衝撃的なデビュー・アルバム

Tom Tom Club
『Tom Tom Club(おしゃべり魔女)』
1981年 1stアルバム(リジィ)

レコード・ジャケット・アートの世界で、ジェームス・リジィを有名にしたのは、トム・トム・クラブでの一連の仕事です。
美術大学出身のメンバーによって結成されたトム・トム・クラブは、まだかけ出しのアーティストだった30歳のジェームス・リジィをデザイナーに起用して、最初のアルバムを制作しました。
ファースト・アルバムの『おしゃべり魔女』、およびアルバムからシングルカットされた『悪魔のラヴ・ソング』と『渚のボードウォーク』のジャケットは、いずれもジェームス・リジィのハッピーな絵によって隅から隅まで彩られています。
ビルボードのダンス曲チャートで1位となった『悪魔のラヴ・ソング』に関しては、おりからのMTVブームに乗ってミュージックビデオまで作られました。 そのビデオも全編がジェームス・リジィの絵を使ったアニメーションで、高い評価を受けました。

Tom Tom Club
『The Genius Of Love(悪魔のラヴ・ソング)』
1981年 2ndシングル(リジィ)

Tom Tom Club
『Under the Boardwalk(渚のボードウォーク)』
1982年 3rdシングル(リジィ)

Tom Tom Club – Genius Of Love (Official Music Video)

トム・トム・クラブに愛されたジェームス・リジィ

Tom Tom Club
『Close to the Bone(フォクシー・ワールド)』
2ndアルバム1983年(ジェームス・リジィ)

デビュー・アルバムの成功に気を良くしたトム・トム・クラブは、2年後の1983年にセカンド・アルバム『フォクシー・ワールド』をリリースします。ジャケット・デザインはもちろんジェームス・リジィが手がけました。
このアルバムからカットされた2枚のシングル『ダンシング・キング』、『愛の気分はパラダイス』のジャケットも、ジェームス・リジィの手によるものです。
ファースト・アルバムよりも先に発売されたファースト・シングルを除いて、トム・トム・クラブの最初の2枚のアルバムと4枚のシングルが、すべてジェームス・リジィのイメージで流通しました。
専属アーティストといってもいいような特別な扱いで、トム・トム・クラブといえばジェームス・リジィの絵が連想されるようになりました。
シングル曲『愛の気分はパラダイス』については、ジェームス・リジィの絵を使用した、全編アニメーションのミュージックビデオが作られ、こちらもたいへんに好評でした。

Tom Tom Club
『The Man with the 4-way Hips(ダンシング・キング)』
4thシングル1983年(ジェームス・リジィ)
アルバムカバー上部の太陽を拡大して使用

Tom Tom Club
『The Pleasure of Love(愛の気分はパラダイス)』
5thシングル1983年(ジェームス・リジィ)

Tom Tom Club – Pleasure Of Love (Official Music Video)


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帰ってきたトム・トム・クラブとジェームス・リジィ

Tom Tom Club
『The Good, The Bad, and the Funky』
5thアルバム2000年(ジェームス・リジィ)

残念ながら、トム・トム・クラブの2枚目のアルバムは、最初のアルバムほどには売れませんでした。
彼らのもう一つのバンドのトーキング・ヘッズが大人気で忙しかったこともあり、トム・トム・クラブのサード・アルバムはそれから5年間作られませんでした。
1988年、ようやく作られたサード・アルバムのジャケットは、心機一転で別のデザイナーが起用されました。
しかし、この3枚目のアルバムはさらに売れず、1992年の4枚目のアルバムの制作までにはさらに4年の月日がかかりました。
アルバムを出すたびに売れ行きが落ちていくので、トム・トム・クラブは流行からはずれてしまったバンドだと多くの人が考えました。
しかし、バンドは解散しませんでした。中心メンバーのティナとクリスが私生活でも仲の良い夫婦で、関係が良好だったからです。
とはいえ、レコード会社はもはやトム・トム・クラブのアルバム制作に興味を示しませんでした。
多くの人がトム・トム・クラブのことを忘れていた2000年、ティナとクリスは8年ぶりにトム・トム・クラブの5枚目のアルバム『ザ・グッド・ザ・バッド・アンド・ザ・ファンキー』を発表します。
今回は、原点に戻って久しぶりにジェームス・リジィがジャケット・デザインで起用されました。
彼らが最後に一緒に仕事をした1983年から17年の年月が経っていました。
トム・トム・クラブの音も、ジェームス・リジィの絵も、どちらも進化していました。

ポップミュージックの世界でも人気だったジェームス・リジィ

オムニバス『Just Say Anything』
1991年(リジィ)

一目でわかるジェームス・リジィのオリジナルでユニークな絵は、キース・ヘリングと並んで、ポップミュージックのジャケット・デザインで重宝されました。
1991年には、サイアー・レコードが自社のアーティストを紹介する目的でリリースするコンピレーション『Just Say Yes』シリーズの5巻『Just Say Anything』のCDジャケットにも起用されています。
『Just Say Yes』シリーズは、ジェームス・リジィとも関係の深いラモーンズの所属レコード会社の企画です。
リジィがアートワークを手掛けた『Just Say Anything』には、ダイナソーJr.やプライマル・スクリームやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインなど、当時の人気バンドが集められていました。
1981年当時は、トム・トム・クラブのようなエレクトロ・ポップが流行の最先端だったのですが、10年後の1991年はノイジーなギター・ポップが流行っていたことがわかります。
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