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東京都美術館「デ・キリコ展」に行ってきた!
10年ぶりの大規模個展は見ておきたい

ジョルジョ・デ・キリコを知っていますか?
日本ではシュルレアリスムの画家として有名です。サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、ジョルジョ・デ・キリコの3名は特に人気が高く、彼らの作品は中学校や高校の美術の教科書にも掲載されています。
10年ぶりの大規模個展「デ・キリコ展」が東京都美術館で2024年4月27日から8月29日まで開催されているので、見に行ってきました。

ジョルジョ・デ・キリコといえば形而上絵画

《予言者》 1914-15
ニューヨーク近代美術館(James Thrall Soby Bequest)
© Digital image, The Museum of Modern Art, New York / Scala, Firenze
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

ジョルジョ・デ・キリコといえば顔のないマネキン人形が寂寞とした風景の中にたたずむ、幻想的な絵で有名です。
これらはニーチェ哲学などに影響を受けたデ・キリコの独創的なモチーフで、「形而上絵画」と呼ばれています。
デ・キリコの作品の中で最も人気が高いのはこの「形而上絵画」ですが、今回のデ・キリコ展は彼がそれだけの画家ではないことを教えてくれます。

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ピカソも驚くほど画風が変化している

《鎧をまとった自画像》1948
ジョルジョ・デ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

「形而上絵画」だけでデ・キリコを知っている人は、彼を古典的な画家だとは考えないでしょう。
しかし、自画像などを見るとデ・キリコは写実的な絵も魅力的に描くことができる画家だとわかります。
筆のタッチや色使いの違いを見ても、同じ画家が描いたものとは思えません。
デ・キリコは、ピカソと同じくらい作風に変化のある画家だと言ってもいいでしょう。「ピカソが恐れた画家」と呼ばれるのも納得です。

シュルレアリスム運動に影響を与えたデ・キリコ


《剣闘士》1928年
ナーマド・コレクション
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

ジョルジョ・デ・キリコが生まれたのは1888年。藤田嗣治やシャガールなど、エコール・ド・パリの画家たちと同世代です。
つまり、同じシュルレアリスムの担い手の中でも、マグリットやダリといった画家たちより一回り年上で、最年長にあたります。
実際、デ・キリコが「形而上絵画」を始めたのは、アンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」を著して、シュルレアリスム運動が始まるよりも前でした。デ・キリコは、むしろシュルレアリスムに影響を与えた人と言えます。
また、デ・キリコがシュルレアリスム運動とかかわりを持ったのは1920年代までです。20年代後半には、同じマネキン人形を描いても、古典的な絵画への志向が徐々に現れてきたことが見てとれます。

古典的なモチーフと構図で描いて何が悪い?


《風景の中で水浴する女たちと赤い布》1945
ジョルジョ・デ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

1930年代から、デ・キリコは古典絵画に範をとった伝統的な絵を描くようになります。
前衛絵画で人気の出た画家が、伝統絵画を描き始めるというのは、これまで自分がやってきた「前衛」を否定するような行為ですから、周囲からは後退や衰退とも受け取られかねない商業的な自殺行為です。
しかし、デ・キリコは周囲の評判などは気にしませんでした。
自分の心にのっとって、そのときどきに描きたいものを描いたデ・キリコこそ、自由な心を持つアーティストらしいアーティストといえるかもしれません。

晩年に再び変化するデ・キリコ


《オレステスの悔恨》1969
ジョルジョ・デ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024

デ・キリコの何がすごいかといえば、さんざん伝統絵画を描いた末に、晩年になると再び「形而上絵画」を描き始めたところです。
「新形而上絵画」とも呼ばれるこれらの作品群は、批評家の間では昔の「形而上絵画」ほど評判はよくありませんでした。
しかし、画集などで見慣れた昔の作品よりも面白く感じられる絵も少なくありません。

珍しい彫刻作品の展示もある


展示風景 ©Giorgio de Chirico.by SIAE 2024

「新形而上絵画」と同時期にデ・キリコが取り組んだのが金属彫刻です。
顔のないマネキン人形をモチーフにしたブロンズ彫刻は、そのまま複製を土産物にしてほしいほどのかっこよさでした。
デ・キリコの晩年の作品群は、自己模倣やマンネリと評されることも多いのですが、アンディ・ウォーホルは自身のポップアートに通じるものを感じたようで、高く評価しています。

東京都美術館は春の行楽にぴったり


東京都美術館

東京都美術館のデ・キリコ展は、デ・キリコが大好きな人にはもちろんおすすめですが、これまであまり興味がなかったという人にも最適です。
デ・キリコには美術史で参照されるようなシュルレアリスムの「形而上絵画」だけではなく、さまざまな側面があります。今回のデ・キリコ展は、それらを整理して存分に見せてくれます。
また、東京都美術館という場所も、休日のお出かけに向いています。上野公園の散策は花が咲き乱れていて楽しいものですし、公園内には、国立西洋美術館、国立科学博物館、東京国立博物館、上野の森美術館などといった、日本を代表する美術館・博物館が並んでいます。
東京都美術館だけでもその内部は非常に広く、同時開催の他の展覧会も見ごたえのあるものでした。
デ・キリコ展は、2024年9月14日から12月8日の期間で神戸市立博物館にも巡回するので、関西方面の方はそれまでお待ち下さい。

展覧会名:デ・キリコ展
会 期:2024年4月27日[土]~8月29日[木]
休室日:月曜日、5月7日[火]、7月9日[火]~16日[火]
※ただし、4月29日[月・祝]、5月6日[月・休]、7月8日[月]、8月12日[月・休]は開室
開室時間:9:30~17:30、金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
会 場:東京都美術館

翠波画廊では、ジョルジョ・デ・キリコ作品を取り扱っています。
ぜひご覧になってください。

ジョルジョ・デ・キリコ作品一覧はこちら >>

 


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