YouTuberが職業として成立するほどに現代は動画全盛の時代です。

絵画や彫刻を主戦場としてきた現代アーティストも、今では動画を無視できません。

作品を動画で撮影し始めると映像作家になってしまいますが、そこまでいかなくてもコラボレーションしたり、知人の映像作品に登場したりすることがあります。

今回は現代アーティストの姿を見られるミュージックヴィデオを6本＋α集めました。

草間彌生はニューヨーク時代に映像作品を監督したり、帰国後は詩や小説を書いたりするほどのマルチメディア・アーティストです。

そんな草間彌生は、2013年に音楽プロデューサー、テイ・トウワの7作目のアルバム『LUCKY』に、ジャケット・アートワークとナレーションで参加しています。

テイ・トウワは武蔵野美術短大在学中からアマチュアのトラックメイカーとして頭角を現しました。短大卒業後にアメリカのパーソンズ美術大学に留学中、音楽ユニットのディー・ライトのDJとして全米デビューした経歴を持っています。
日本ではなくアメリカで有名になったところが草間彌生と同じです。

草間彌生の姿と声は、アルバム1曲目「RADIO」のミュージックヴィデオ冒頭で見聞きすることができます。MV本編がフィーチャーしているのはコーラスで参加している女優の玉城ティナで、ヴォーカルは2023年に亡くなった高橋幸宏（YMO）が担当しています。

アンディ・ウォーホルも草間彌生のように数多くの映画作品を制作しています。
そして、ウォーホルが監督としてクレジットされたミュージックヴィデオが一つだけあります。

ブロンディと同じくニューヨークのニューウェーブ・バンド、カーズの「ハロー・アゲイン」（1984年）です。
シャイなウォーホルには珍しく、バーテンダー役として1分49秒あたりから、ばっちりと出演しています。口の動きと音楽が合っていないのはわざとでしょう。

このミュージックヴィデオは、最初にウォーホルが作ったバージョンが、肌の露出が多すぎて放送禁止となったために編集し直されたものです。そのため、冒頭では音楽の始まる前に、メディアにおけるセックスと暴力について子どもたちが意見を述べる「教育的配慮」が差し込まれています。
エロチックなシーンの多い初期バージョンも、今ではネットで見ることができます。

そのほか、イギリスのバンド、キュリオシティ・キルド・ザ・キャット（好奇心は身を滅ぼす）の1986年のシングル「ミスフィット」のミュージックヴィデオ2分36秒あたりからもウォーホルは出演して、無表情の不気味な役を演じています。

次々とフリップをめくっていく姿は、かつてウォーホルと女性モデルのイーディ・セジウィックをとりあったと言われる、後のノーベル文学賞受賞者ボブ・ディランの「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」（1965年）のパロディです。

ウォーホルやバスキアと同時代に人気のあった現代アーティストといえば、キース・ヘリングです。

キース・ヘリングは、アンディ・ウォーホルとともに、グレイス・ジョーンズのミュージックヴィデオ「アイム・ノット・パーフェクト」（1986年）に出演しています。

グレイス・ジョーンズはウォーホルのミューズとも呼ばれた長身のジャマイカ人モデルで、その異彩から歌手や女優としても活躍し、映画007シリーズにも出演しています。

ミュージックヴィデオでは35秒あたりに「グレイス・イズ・パーフェクト」としゃべるウォーホル、55秒あたりから終盤にかけて、床に広げた布に絵を描くキース・ヘリングが出てきます。キース・ヘリングの描いた絵は、後半でグレイス・ジョーンズの衣装に早変わりします。