画像生成AIはアートの未来を変えるのか?
フェルメールと比較してみた
《Theatre D’opera Spatial》と、その表彰
出典:Motherboard
最近のAI(人工知能)の進化には目を見張るものがあります。
将棋でAIが、当時のトップ棋士である佐藤天彦名人を2連勝で破ったのが2017年。
囲碁でも2017年に、世界最強棋士とされた中国の柯潔九段をAIが3連勝で破りました。
AIは計算が速いので、将棋や囲碁などルールのある中で最善手を探すのは得意なのです。
一方、ルールのあいまいな人間の営みを模倣するのは不得手と言われていましたが、最近はAIの描いた絵のクオリティが非常に高くなったことが話題になっています。
2022年8月にアメリカのコロラド州で開催されたファインアートのコンクールでは、デジタルアート部門で画像生成AI「Midjourney」が描いた絵《Theatre D’opera Spatial》が1位になったそうです。
アート界は、この現象をどうとらえたらよいのでしょうか。
AIはパラダイムシフトを起こすのか
はじめに確認したいのは、画像生成AIは万能ではないことです。
たとえばあなたが、自分の頭の中にある理想のイメージをAIに描かせたいと思ったとき、そのイメージが細かいところまで鮮明にできていればいるほど、AIに同じように描かせるのは困難であるとわかるでしょう。
現状では、画像生成AIに対しては「これこれこういうものを描いてくれ」と言葉で指示するようになっているのですが、イメージを言葉に置き換えるだけで齟齬が生じますし、その言葉をAIがどのように解釈するかも計算しきれないからです。
画像生成AIは、古今東西の画像データを参照して、指示された言葉に近いデータを選び出して、それを学習、合成しています。
ですから、まったく同じ言葉で指示しても、2回目、3回目は異なる画像が生成されるのが常です。非常にランダム要素が強いのです。
AIに描かせた絵でコンクールの1位を取った人は、クオリティの高い絵を生成するために、たくさんの言葉を細かく書いた、長い呪文のような指示(プロンプト)を出していましたし、思い通りの出力が得られるまで、指示に微調整を加えながら何百枚もやり直したそうです。
つまり、それなりの努力や苦労があっての部門1位であり、決して、ボタン一つで楽に得られた結果ではないのです。
画像生成AIの発明は、美術史では、カメラの発明と同じものととらえられるでしょう。
カメラもまた、ボタン一つでリアリティあふれる画像を作り出すことができる道具ですが、クオリティの高い写真を撮影するためにはそれなりの専門知識やロケーションハンティングが必要であり、誰もが簡単に画像制作のプロになれるわけではありません。
また、カメラも登場当初は、肖像画家や風景画家の仕事を奪う脅威と受け止められましたが、手描きの絵とカメラで撮影した写真には質的に違いがあることがわかり、画家の仕事がなくなることはありませんでした。
ですから画像生成AIが普及しても、研鑽を積んだクリエイタがAIを使ってデジタルイメージを量産する一方で、ピンポイントで狙い通りの絵を描くことができる人間の画家の需要はなくならないと思います。
画像生成AIに絵を描かせてみた
実際に、AIがどのような絵を描けるのか試してみました。
現在、画像生成AIのなかで最も有名なのは、アメリカのコンクールのデジタルアート部門で1位になったAI「Midjourney」ですが、手軽に使えるのはAI「Stable Diffusion」です。
通常、画像生成AIに対しては英語で指示を出さなければならないのですが、「Stable Diffusion」の場合、スマートホンのアプリ「AI Picasso – Dream Art Studio」(AIピカソ)などを使うことで、日本語で指示を出すことができます。
また、画像生成AIは、さまざまなデータを持っているので、その画風やタッチを指定することで、既存の画家の作風を真似た絵をつくることができます。
試しにアプリ「AI Picasso – Dream Art Studio」で、「フェルメールが描いたキリスト」と指示したところ、ものの数秒で出力されたのがこちらになります。
《フェルメールが描いたキリスト》
すごく、微妙な絵です。
たしかにキリストっぽいひげも生えていますし、フェルメールを彷彿とさせるところはありますが、本物のフェルメールなら絶対に描かないであろう絵ができてしまいました。
現代のイラストレーターが《真珠の耳飾りの少女》のパロディを描いたらこんな風になるのでしょうか。右の頬が赤く染まっているのも、ちょっと気持ち悪いです。
こんなことでめげてはいられません。
画像生成AIの良いところは、いくらでもやり直しができるところです。むしろ、指示を微調整しながら何度も生成して、その中から人間が選別するのが前提とされています。
というわけで、もう一度、同じ条件で生成してみました。これです。
一転して、フェルメールが描いた風になりました。かなり良いです。
でも、まだ《真珠の耳飾りの少女》にひきずられている面があります。もう一度やってみましょう。
青いターバンがなくなりましたが、頭の被りものは健在です。
顔はキリストですが、服装は修道女っぽい気がします。タッチもCGっぽいですね。
AIは性別を区別しないので、男性と女性が混ざった絵が多くなるような気がします。
もう一回チャレンジしたところ、まあまあイケてるキリストができました。
フェルメールが描いたキリスト
実はフェルメール自身もキリストの絵を描いています。
フェルメールは現存作品がおよそ35点で、その大半が市民の日常生活を描いた風俗画なのですが、わずかながら宗教画も残っているのです。
こちらが、本物のフェルメールが描いたキリストです。
構図が異なるのでいちがいに言えないのですが、AIのキリストのほうが好きという人もいるかもしれません。
ちなみに、フェルメールのキリストの需要は高く、天才贋作画家メーヘレンはフェルメールの宗教画を偽造して高名な批評家を騙しました。
メーヘレンの描いたキリストは、一時は本物のフェルメール作品と鑑定されて、高額で有名美術館に購入されたのです(贋作と判明した現在もそのまま所蔵されています)。
こちらです。
メーヘレンの作品は一見フェルメールっぽくは見えませんが、ラピスラズリを使ったフェルメール・ブルーや、窓から入る柔らかい光など、ピンポイントでフェルメールの特徴をとらえています。そこで最後に、AIにもそのような絵を描かせてみました。いかがでしょう?
《フェルメールが描いたキリスト》
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