蒸し暑い夏は、涼しい軽井沢でアートを楽しみたい!
日本初の、藤田嗣治の作品だけを展示する美術館に行ってきた
今でこそ草間彌生や村上隆といった例はありますが、戦前に海外で成功した日本画家といえば、藤田嗣治をおいて他には見当たりません。
パリに住んで現地で名声を得た藤田嗣治は、当時は日本よりもフランスでの知名度のほうが高く、後年はフランスに帰化してレオナール・フジタの洗礼名を得て、日本に戻ることはありませんでした。
そして、フランスではエソンヌ県ヴィリエ・ル・バクルに藤田のアトリエ兼住居が観光名所として保存公開されているのに対して、日本では藤田嗣治の個人美術館はこれまで存在しませんでした。
そんな状況に終止符を打ったのが軽井沢安東美術館です。
2022年10月に開館したこの美術館は、投資家の安東泰志さんによって蒐集された藤田嗣治の作品だけを展示する美術館です。
なぜ軽井沢に藤田嗣治の美術館ができたのか?
軽井沢安東美術館は、藤田嗣治の作品に特化した美術館であるにもかかわらず、名前に藤田の名前を冠してはいません。
その代わりに、美術館がある軽井沢の地名と、オーナーコレクターの安東さんの名前がつけられています。
そこには、軽井沢の地に対する思いが込められています。
安東さんにとって、別荘のある軽井沢は仕事を離れて休息できる癒しの地でした。
2006年頃、たまたま軽井沢のギャラリーで藤田嗣治の作品「魅せられし河:ヴァンドーム広場」を見た安東さんは、それを気に入って、最初のコレクションとなる藤田の作品を購入します。
藤田が描くかわいい作品に癒しを感じた安東さんは、次々と藤田作品を購入していきました。
そしてコレクションが150点を超えた2018年頃に、藤田作品と同じく自分に癒しを与えてくれる軽井沢の地に美術館を設立することを考え始めます。
こうして2022年に軽井沢駅北口から徒歩8分の地にオープンしたのが軽井沢安東美術館です。
美術館内にはコンサートも開催できるサロン・ル・ダミエがあり、併設の飲食店は、昼は1921年創業のコーヒー器具メーカーHARIO直営の「HARIO CAFE」、夜は軽井沢の柳沢農園(Yanagisawa Farm)が運営する「Y Farm Restaurant」に姿を変えます。
冬の間は閉店する店の多い軽井沢ですが、軽井沢安東美術館は冬季もオープンしており、軽井沢の新名所としてその存在感を増しています。
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2024夏の特集展示「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」
軽井沢安東美術館では、色分けされた4つの展示室を使って、藤田嗣治の作品を時系列で展示しているので、パリで人気となった乳白色の時代をはじめとして、多彩な藤田作品を見ることができます。
また2024年7月25日から9月24日まで開催の夏の特集展示「戦争の時代 日本における藤田嗣治 日常から戦時下へ」では、藤田嗣治が本格的に戦争画の制作へ向かっていく前の時代に焦点を当てています。
1933年にフランスから日本に帰国した藤田について、日本滞在中の藤田に焦点をあてた展示がこれまではあまりなく、またその期間の藤田について、あまり知られていないという理由からです。
歴史学を専攻していたというキュレーターの榑沼範子さんは、藤田嗣治の足跡や歴史を知っていただける展示を心掛けていると語りました。
さらに、展示室4では、教会をイメージして、礼拝堂のようにベンチを配した宗教画の部屋を作っています。
1968年に死去した藤田嗣治(レオナール)と、2009年に死去した君代夫人(マリー=アンジュ)の遺骨は、最晩年に藤田が設計し、フレスコ画を描いたマルク県ランスのフジタ礼拝堂に眠っています。
フランスに帰化して洗礼を受けた藤田嗣治にとっては、キリスト教の宗教画もまた大切なモチーフでした。
アートだけでなく、カフェも料理も楽しめる美術館
今年2024年、軽井沢安東美術館に新しい施設が加わりました。
先ほども少し触れた「Y Farm Restaurant」です。
17時に閉店する併設の「HARIO CAFE」のスペースを使って、17時から営業する「Y Farm Restaurant」が7月26日にオープンしました。
「Y Farm Restaurant」は、農業の美しさと野菜本来がもつ創造性を結び付けた「アートな一皿」をコンセプトに、農園で収穫した野菜やハーブの味わい、造形、色彩の美しさを体験することができます。
特に、静岡県で開発された高濃度トマトのアメーラを使用した「丸ごとアメーラトマトのリゾット」は、じっくりとローストしたアメーラトマトをまる1個使用したうえに、アメーラトマトのソースをかけたトマトづくしの一品。
アメーラは静岡の言葉で「甘いでしょ」の意味で、トマトとは思えないほどの甘みを堪能することができます。
夏の避暑地として人気の軽井沢で、アートと料理の贅沢なひとときを過ごしてみませんか。
翠波画廊大阪店では藤田嗣治展を開催中です。
コラム内で紹介されました、「魅せられし河:ヴァンドーム広場」をはじめ40点近い作品を展示いたしております。
ぜひお立ち寄りくださいませ。
翠波画廊では、藤田嗣治作品を取り扱っています。
ぜひご覧になってください。
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