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デイヴィッド・ホックニーの版画の値段
~現役最高価格画家の飽くなき探求心

存命の画家として、その絵がオークションの史上最高価格で落札されたことで有名なデイヴィッド・ホックニーは投資する価値のある画家のひとりです。
1937年イギリス生まれのホックニーは、ゲイつながりのウォーホルとの友情でも有名ですが、世代的にはウォーホルよりも一回り年下で、カシニョールやギィ・デサップとほぼ同じ年齢になります。
ホックニーが最初に名声を得たのは1970年代ですが、その後も創作意欲は旺盛で、近年ではiPadによるデジタル・ドローイングのシリーズが話題になるなど、現役の画家として常に注目を集めています。
また、ホックニーは過去5年間の現代アートの版画で最も高い収益率を記録したアーティストです。今やバンクシーやウォーホルの版画は数百万円からに高騰してしまいましたが、ホックニーの版画は数十万円でも購入できたので投資価値が高かったのです。

ホックニーの版画作品の平均販売価格推移(単位:英ポンド)
出典:MyArtBroker

5年間で価格が7倍になったホックニーの版画

デイヴィッド・ホックニー
《Untitled No.516》2016年(iPadで描画)

デイヴィッド・ホックニーの版画マーケットは、2020年にCOVID-19のパンデミックで停滞したことを除けば、ここ5年間にわたって高い成長率を維持しています。
ホックニーの版画作品の平均価格は2017年から2022年にかけて約2倍になりました。それに伴い市場規模(販売総額)も2倍以上に拡大しています。
ホックニーの版画価格の過去5年の年平均成長率は15%になります。
この5年間の取引における価格比較が可能なホックニーの版画83作品を調べると、投資リターンがマイナスとなったのはわずか6作品(7.2%)だけです。
残りの77作品は価格が上昇し、うち5作品は価格が6倍以上になりました。パーセンテージでいえば92.8%は投資リターンがプラスとなり、うち6%は500%以上の投資リターンをもたらしました。
なかでも《Untitled No.516》は、元の価格が廉価であったため5年間で投資リターンが633%という驚異的な数字を記録しました。この作品はiPadで描かれたデジタル絵画で、市場で取引されたのは印刷物に手書きのサインが加えられた250部限定のエディションです。初めてオークションに出品されたときは8700ポンドでの落札でしたが、直近では3万ポンドとなっています。

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版画史上最高額はホックニーの作品

デイヴィッド・ホックニー
《Piscine De Medianoche (Paper Pool 30)》1978年

デイヴィッド・ホックニーは若い頃から新しい技術をとりいれる革新的なアーティストでした。
当初ロンドンでエッチングやリトグラフを制作していたホックニーは、絵画だけでなく写真にも興味を持っていました。しかし現像に時間がかかる従来の写真は、ライブ感を大切にするホックニーを満足させるものではありませんでした。
20代後半でイギリスからアメリカに移ったホックニーは、そこでポラロイドカメラに出会い「ジョイナー」と名づけたコラージュ作品をつくりはじめます。
さらに1986年には業務用のコンピュータ・グラフィックスのワークステーション「クォンテル・ペイントボックス」を使って絵を描く実験にも取り組んでいます。
とはいえ、画家であるホックニーはCG技術にあまり入れ込むことはなく、すぐにアナログに回帰します。
次にホックニーが目をつけたのは、ゼロックスのコピー機でした。ホックニーはコピー機を駆使して、コラージュ作品をつくることに夢中になりました。
プロの刷師や工房が必要であった従来の版画と異なり、コピー機を使えばたった一人で気のすむまで実験を繰り返すことができたからです。「ホームメイドプリント」と名づけられたこれらのシリーズは、その新しさからホックニーの名前を広げました。
そして2008年、ホックニーはiPhoneのドローイングソフトで絵を描き始めます。
2010年に、より大きなディスプレイを持つiPadが発売されると、それはホックニーにとって欠かせない画材となりました。重いスケッチブックや画材を持ち歩かなくても、あらゆる場所であらゆる色と筆触を指先だけで実現できるようになったのです。
印刷機によるデジタルプリント作品の価値を高めたという意味でもホックニーは美術史にとって重要な存在でしょう。
そのほかにもホックニーにはいくつもの勲章があります。たとえば特殊なリトグラフの手法で制作された「ペーパー・プール」シリーズの一つ《Piscine De Medianoche (Paper Pool 30)》は、大量生産の版画作品としては史上最高額の1174万ドル(約13億円)で2018年に落札されました。これは名作の呼び声高いピカソの版画《The Frugal Repast(貧しき食事)》800万ドル(約10億円)を大きく超えています。
また、ホックニー《Woldgate Woods, Winter》は、ビデオ・インスタレーション作品としてブルース・ナウマン《No, No, New Museum》の約163万ドルに次ぐ、史上2位の約110万ドルで落札されています。
絵画はもちろん写真から映像作品まで、興味を持てば何にでも取り組んでしまう幅広い作風がデイヴィッド・ホックニーの魅力の一つです。

存命画家による絵画の史上最高額もホックニーの作品

デイヴィッド・ホックニー
《Portrait Of An Artist (Pool With Two Figures)》1972年

デイヴィッド・ホックニーの最も有名な作品は、2018年11月15日にクリスティーズ・ニューヨークで落札されたアクリル絵画《芸術家の肖像画(プールと2人の人物)》でしょう。
落札価格が9030万ドル(約102億円)となり、ジェフ・クーンズ《バルーン・ドッグ(オレンジ)》を抜いて存命芸術家の作品で当時の史上最高額となったからです。
翌年にはジェフ・クーンズ《ラビット》が記録を塗り替えるのですが、その差額はわずかなもので、絵画としては今でも存命画家作品で最高額の地位を譲っていません。
開放的な屋外プールは、カリフォルニアに移住したホックニーが「イギリスにはない」と感銘を受けたものの一つで、何度も絵のモチーフにしています。また、人物のモデルは当時のホックニーの恋人だと言われています。

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