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美術館はなぜ作られたのか(1)
~英語では博物館と美術館は同じミュージアムである

日本は、美術館の来場者数が多い国として知られています。
世界中の美術展覧会における平均入場者数の年間ランキングを見ると、たいてい日本の美術展が上位を独占しています。
例えば2017年の1位は東京国立博物館の「運慶」展で、日間の平均入場者数は1万1000人を超えました。美術館の開館時間はおよそ11時間ですから、1時間で1000人、1分間に16人がひっきりなしに入場したことになります。
そのほか2017年に人気の美術展は、東京国立博物館の「ミュシャ」展、「草間彌生」展、京都国立博物館の「国宝」展で、総入場者数はいずれも50万人を超えました。
このように人気の美術館ですが、その起源はどこにあるのでしょうか。

 

実は「美術館」というのは、日本語独特の言葉です。
例えば、ルーヴル美術館はフランス語でMusée du Louvre(ミュゼ・デュ・ルーヴル)といいます。同じくフランスにある壁紙博物館はMusée du Papier Peint(ミュゼ・デュ・パピエ・パン)といいます。フランスでは美術館も博物館も同じMusée(ミュゼ)なのです。
このMusée(ミュゼ)を英語に訳すとMuseum(ミュージアム)になります。日本語でミュージアムといえば通常は博物館ですが、海外では博物館と美術館は同じものなのです。
例えば、大英博物館はThe British Museumですし、J・ポール・ゲティ美術館はJ. Paul Getty Museumです。
ところが日本では、国立美術館と国立博物館は運営組織からして厳然と区別されています。かと思えば、冒頭の「ミュシャ」展、「草間彌生」展などは、美術館ではなく博物館で開催されていますから、その境界も曖昧です。
いったい、いつからこのようになっているのでしょうか。
もともと日本にはミュージアムに相当するものがなく、欧米から輸入するかたちで博物館を開設しました。このとき人類遺産としての古典美術と、芸術家の自己表現としての近代美術とが明らかに違うカテゴリーに見えたために、博物館と美術館とを分けてしまったようです。
一方、近代美術誕生以前からミュージアムとしてさまざまなものを飲み込んできた欧米では、古典美術と近代美術との境目が曖昧で、当初は区別されなかったのです。
新興国家であるアメリカは、メトロポリタン美術館(Metropolitan Museum of Art)やニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art)のようにArtの言葉で両者を分けようとの工夫が見られますが、それはあくまでもサブ分類であり、美術館が博物館の枠内にあることは変わりません。

そもそもミュージアムの語源は、ギリシャ・ローマ神話に登場する美の女神ミューズにあります。ミューズはミュージックの語源でもありますから、当時の美術は音楽から歴史、喜劇、叙事詩、天文学まで含む幅広い概念でした。
ミューズがミュージアムに至る直接のきっかけは、紀元前3世紀にプトレマイオス朝の王が、首都アレクサンドリアに私財で建てたムセイオンです。ムセイオンは、博物館というよりも研究施設で、世界最大の図書館を持ち、国中から学者が集められ、天文学や物理学や博物学の研究が進められました。講義室や食堂や宿舎もあったそうですが、教育施設というよりも収集と分類のためのものでした。
つまり、ミュージアムの起源は、コレクションに主眼が置かれたものと考えることができます。実際、西欧のミュージアムの概念には、日本でいうところの図書館、文書館、水族館、動物園、植物園、歴史遺跡などまで含まれます。ムセイオンに集められた学者たちも、王による知のコレクションだったのかもしれません。
現在、日本でミュージアム(博物館、美術館)といえば、何やら高尚な啓蒙施設のような響きがありますが、その発端は個人の収集の欲望にあったと思います。
日本にも東大寺正倉院などがあるように、実用的な意味はないけれども稀少なものは、財力のありあまる権力者の収集の対象になるのです。

ちなみに日本の博物館の始まりは19世紀末、明治5年の東京国立博物館の開館です。
江戸時代の英和辞書はmuseumを「学術の為に設けたる場所。学堂書庫等を云ふ」と解説してあり、これはムセイオンを彷彿とさせます。おそらく原典となった辞書がそうなっていたのでしょう。
しかし、実際に作られた博物館は、書画骨董や珍品器物を集めたものでした。これは当初の設立の目的が博覧会の開催にあったからで、まさにコレクションだったわけです。
しかし、本来はコレクションの意味合いが強い「ミュージアム」に対し、「博物館」と建物を強調した訳語を当てたことは、後に、コレクションが揃ってないのに美術館を建設する箱モノ行政を生み出す遠因になったとも言われます。
また、大正時代に上野に作られた日本初の公立美術館(後の東京都美術館)が、美術団体へ貸す会場として建設されたことも、会場ありきの日本の美術館・ギャラリーの性質を決定づけたものと言えるでしょう。日本のギャラリーに貸し画廊が多いのも、箱を重視する発想のせいかもしれません。
その起源から言えば「ミュージアム」とは、何よりもまず個人の収集欲を満たすコレクションでした。
人に見せることよりも集めることのほうが先に来るのは、その性質から言えば当然ですが、日本の美術館は先に建物を建てることが多かったために、そのコンテンツを集めるのに苦労しました。
そのために、日本の美術館は、世界中から絵画を借りてきての企画展が盛んになったと言えるかもしれません。コレクションが少ないことが、人を集める魅力的な企画を生んでいるのです。

 

 


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