スペイン史上最も有名な画家は誰?
~ゴヤ? ベラスケス? エル・グレコ?
2019年8月現在、翠波画廊では「スペイン三代巨匠」展を行っています。
翠波画廊の提唱する「スペイン三代巨匠」とは、近代画家のパブロ・ピカソ、ジョアン・ミロ、サルバドール・ダリです。
アンダルシア生まれのピカソ、カタルーニャ生まれのミロとダリは、まさにスペイン近代を代表する画家たちです。
一方、スペインで「三大画家」とは誰かと訊ねれば、時代を少しさかのぼったエル・グレコ、ベラスケス、ゴヤの三人の名前が挙げられることが多いです。
ピカソ、ミロ、ダリ、エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤ――いずれもスペインを代表する巨匠たちです。
この6人の中で、スペインを代表する画家を一人選ぶとしたら、いったい誰になるでしょうか?
スペインの画家といえばやっぱりあの人?
スペインの代表といっても、人の好みは千差万別ですから、議論をしても決着はつきません。
そこで消去法を使って選んでみましょう。
たとえば、エル・グレコはスペインで活動した画家ですが、実はクレタ島生まれのギリシャ人です。エル・グレコという名前は、スペイン語で「ギリシャ人」を意味します。スペインでは人気画家ですが、代表に選ぶのは難しいかもしれません。逆に、ピカソはスペイン生まれの画家ですが、その画家人生のほとんどをフランスで送っています。スペインでも人気の画家ですが「スペインのピカソ」というよりは「世界のピカソ」の呼び名のほうが相応しいでしょう。と、ここまで書いてみましたが、すでに異論を持つ方がたくさんいそうです。世界一有名な画家ピカソを外すなんてありえないという声が聞こえてきます。たった一人を選ぶなんて、とうていできそうにありません。
そこで、ここでは一つの基準として紙幣の肖像画に注目してみましょう。スペインの発行する紙幣に選ばれた画家であれば、ベスト・オブ・スペインの名にふさわしいでしょう。ちなみに、フランスの紙幣に選ばれた画家はセザンヌ、ドラクロワ、モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールの3名です。まあまあ納得できる人選ではないでしょうか。ちなみに、スペインの紙幣の肖像画に選ばれた画家は、調べたところ2名いました。そのうちの1人は、前述の6名の中に入っています。さて、ピカソ、ミロ、ダリ、エル・グレコ、ベラスケス、ゴヤ、のうち、選ばれたのは誰でしょうか。
答えはこちらになります。
スペイン50ペセタ紙幣(ディエゴ・ベラスケス)
ベラスケス(1599-1660)『王太子カルロス』
17世紀の画家ベラスケスは、スペインに遊学したマネが「画家の中の画家」と呼んで憧れた巨匠です。スペインは1492年にイベリア半島からイスラム教徒勢力を追い払ったレコンキスタから、ハプスブルク家のカルロス1世の即位、そしてコルテスやピサロらによるアメリカ大陸の征服とポルトガルの併合のあった16世紀が最盛期でした。その後ゆるやかに衰退していきますが、17世紀までは文化的にはスペインの黄金時代が続きました。ベラスケスはその最も良い時期に、スペイン国王フェリペ4世の宮廷画家として数々の傑作を残しました。というわけで、スペイン代表は暫定的にベラスケスとさせていただきます。異論は認めます。
スペインの人気画家を知っていますか?
ところで、実はスペインにはもう1人、紙幣の肖像画に選ばれた画家がいます。それは、19世紀後半から20世紀前半にかけて絵を描いた、フリオ・ロメロ・デ・トーレスです。
スペイン100ペセタ紙幣(フリオ・ロメロ・デ・トーレス)
フリオ・ロメロ・デ・トーレス(1874-1930)『フエンサンタ』
1874年に生まれたフリオ・ロメロ・デ・トーレスは、ピカソよりも7歳年上で、マルケやヴラマンクといったフォーヴィスムの画家と同世代です。フリオ・ロメロはイベリア半島南端のアンダルシア州のコルドバに生まれ、ピカソやダリやミロのようにフランスに出ることはなく、その生涯のほとんどをスペイン国内で過ごしました。生まれ故郷であり、死に場所でもあったコルドバの自宅は、現在はフリオ・ロメロ・デ・トーレス美術館となっていて、遺族の寄贈した膨大なコレクションを鑑賞することができます。フリオ・ロメロは日本ではあまり有名ではありませんが、官能的な女性画を数多く残し、スペインでは圧倒的な知名度を誇っています。
しかし、20世紀前半の前衛芸術運動の中では、フリオ・ロメロの写実的な絵は、保守的なものに感じられたのでしょう。スペインではたいていの美術館がその作品を所蔵しているといっていいほどの人気を誇りますが、国外ではそれほど有名ではありません。現在の視点で見ると、そのうまさに素直に惹かれますし、まっすぐに私たちを見る女性たちの視線の強さに目が離せなくなること間違いありません。
スペインの画家の魅力とは?
エル・グレコやゴヤ、ピカソ、ダリ、ミロといった偉大なスペインの画家たちは紙幣になることはもうないのでしょうか。
実はスペインは通貨をユーロに統合してしまったので、スペイン固有の紙幣が作られることはもうありません。しかし、硬貨だけは各国政府が鋳造しているので、記念硬貨としてスペインの画家が登場することがあります。スペインのプラド美術館は2019年に開館200周年を迎えました。その記念硬貨として、スペインの3人の画家の代表作をフィーチャーした10ユーロ銀貨が登場しました。ラインナップは、ベラスケス『王太子カルロス』に加えて、エル・グレコ『受胎告知』とゴヤ『裸のマハ』でした。
右:フランシスコ・ゴヤ(1746-1828)『裸のマハ』
フリオ・ロメロ・デ・トーレスの絵を見てもわかるように、スペインでは、コンセプトが中心の現代絵画よりも、何が描かれているかが明確な写実絵画の人気が高いのです。現在、千葉県のホキ美術館は「スペインの現代写実絵画」と題した企画展を行っています。これは現代具象絵画をコレクションしているヨーロッパ近代美術館(バルセロナ)の協力を得て開催しているものです。ホキ美術館は、世界初の写実絵画専門美術館として2010年にオープンしたユニークな美術館です。「スペインの現代写実絵画」展は、2019年9月1日までホキ美術館、その後は11月10日まで佐賀県立美術館へ巡回の予定です。
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