彫刻作品の価格相場をご存じですか?
~ジャコメッティとブランクーシとジェフ・クーンズ
美術といえばすぐ絵画が頭に浮かびますが、彫刻もまた美術作品です。私たち翠波画廊は絵画がメインですが、実は小さな彫刻も扱っています。何を隠そう私も、美大の彫刻科を卒業しています。しかし、彫刻作品の市場は、絵画作品に比べてあまり大きくありません。どんな壁にでも飾れる絵画と異なり、彫刻は置き場所を選びます。そのため彫刻の市場は、絵画に比べてあまり広くありません。ニーズは価格に反映されますから、彫刻は手間に比べて安く感じられることもあります。彫刻作品の価格はどのようになっているのか、オークションで高額落札された彫刻作品を見ながら考えてみましょう。
描かれたジャコメッティの肖像
綺羅星のごとく有名画家の居並ぶ絵画の世界と異なり、美術の世界における人気彫刻家は限られています。実は、過去にオークションで高額落札された彫刻作品のベスト3は、同じ作家の手になる作品でした。その作家の名前は、ご存じアルベルト・ジャコメッティ。1901年、スイス生まれの彫刻家で、折れそうなほどに細い手足と身体を持つ人間像で知られています。世界的に有名なジャコメッティの肖像と作品は、スイスの100フラン紙幣にも使われています。
そんなジャコメッティの作品の中で、2018年現在、彫刻オークション過去最高落札額に輝いているのは「指差す男」(1947)です。合計6つ作られた「指差す男」のうちの4つまでは美術館に収蔵されていますが、残りの2つは個人所蔵です。そのうちの1つが2015年にクリスティーズ・オークションにかけられ、1億4130万ドルで落札されました。これが2018年現在、彫刻作品につけられた最高価格です。
描かれたジャコメッティ「歩く男」
次に、オークション落札額2位の彫刻作品は、同じくジャコメッティの「歩く男」(1961)です。「歩く男」は、紙幣にも掲載されたジャコメッティの代表作で、2010年のサザビーズ・オークションにて、1億430万ドルで落札されました。 そして落札額3位もジャコメッティです。「チャリオット(二輪戦車)」(1950)は2014年のサザビーズ・オークションに出品され、落札額は1億100万ドルでした。 このように彫刻界では圧倒的なスターのジャコメッティですが、絵画や版画作品も多く残しています。パリに住み、ピカソやミロとも交流のあったジャコメッティは、絵画にも造詣が深かったのでしょう。2018年に日本公開された映画『ジャコメッティ 最後の肖像』は、晩年のジャコメッティが肖像画を製作する模様を、モデルになったアメリカ人青年の視点で描いたものです。
さて、彫刻オークション落札額の4位は、コンスタンティン・ブランクーシの「洗練された少女」(1928-1932)です。2018年のクリスティーズ・オークションにて7100万ドルで落札されました。ブランクーシも人気彫刻家ですが、ベスト3のジャコメッティ作品と比べると、ぐっと価格が落ちます。やはりジャコメッティは特別なのでしょう。
ブランクーシとその彫刻
1876年、ルーマニア生まれのブランクーシは、マルケやヴラマンクらフォーヴィスムの作家と同世代の彫刻家です。パリに住み、モディリアーニやマルセル・デュシャンなどと交流しました。流れるような線で物体をデフォルメし、シンプルでミニマルな作品をものしたブランクーシは、後の抽象彫刻に大きな影響を与えました。もちろんルーマニアではスターで、その肖像と作品は紙幣にも使われています。
落札額5位は、モディリアーニの彫刻作品「頭」(1910-1912)です。2010年のクリスティーズ・オークションにて、5950万ドルで落札されました。画家として知られるモディリアーニですが、当初は彫刻家を目指していて複数の作品を残しています。「頭」は、アフリカ彫刻の影響が見られる面長の女性像で、モディリアーニの絵画の特徴が見られます。彫刻としては高額ですが、モディリアーニの絵画は最高で1億7040万ドルで落札されていることを考えると、もう少し価格が上がってもいいような気がします。やはり、絵画に比べると彫刻のニーズは低いのでしょうか。
6位はジェフ・クーンズの「バルーン・ドッグ」(1994-2000)で、2013年にクリスティーズ・オークションにて5840万ドルで落札されました。1955年生まれのクーンズは、アメリカの現代アーティストです。奈良美智やキース・ヘリングと同世代のまだ若い作家ですが、巨大な彫刻や絵画作品が多く、現存作家の中では高額落札作品が多いことで知られています。この「バルーン・ドッグ」の5840万ドルは、2018年にデイヴィッド・ホックニーの絵画「芸術家の肖像画―プールと2人の人物」に抜かれるまで、存命アーティスト作品のオークション落札額最高記録となっていました。 7位は再びブランクーシで「眠れる女神」(1913)になります。2017年にクリスティーズ・オークションにて5730万ドルで落札されました。ブランクーシにしては具象的な彫刻作品です。
8位は紀元前30世紀頃に古代メソポタミアで作られたと見られる「グエノルのライオン」です。2007年のサザビーズ・オークションにて5720万ドルで落札されました。当時、オークションにおける彫刻の過去最高落札価格を更新して、話題になりました。 9位と10位は再びジャコメッティで、「偉大な薄い頭」(1955)2作品です。2010年のクリスティーズ・オークションで5330万ドル、2013年のサザビーズ・オークションでは5000万ドルで、それぞれ落札されました。5000万ドルのほうは「ディエゴの頭」とも呼ばれています。このように見てくると、ベスト10に5作品が入るジャコメッティの圧倒的な人気がよくわかります。
最後に、惜しくもベスト10には漏れたものの、次点の作品を紹介します。11位はなんと、画家として知られるマティスの彫刻作品「ヌードの背中No.4」です。彫刻ですが、いかにもマティスらしい太い線がユーモラスな佳作です。
ちなみに、日本人作家の彫刻作品の最高落札価格は、村上隆「マイ・ロンサム・カウボーイ」です。2009年のサザビーズ・オークションにて1516万ドルで落札されました。髪を逆立てたアニメキャラが、ペニスを握ってザーメンを振り回しているかのようなそのフィギュアは賛否両論を呼び、村上隆の名前を全世界に知らしめました。
オークションの彫刻作品落札価格ベスト10(2018年現在)
1、ジャコメッティ「指差す男」1億4130万ドル
2、ジャコメッティ「歩く男」1億430万ドル
3、ジャコメッティ「二輪戦車」1億100万ドル
4、ブランクーシ「洗練された少女」7100万ドル
5、モディリアーニ「頭」5959万ドル
6、クーンズ「バルーン・ドッグ」5840万ドル
7、ブランクーシ「眠れる女神」5730万ドル
8、作者不詳「グエノルのライオン」5720万ドル
9、ジャコメッティ「偉大な薄い頭」5330万ドル
10、ジャコメッティ「偉大な薄い頭(ディエゴ)」5000万ドル
次点、マティス「ヌードの背中No.4」4880万ドル
参考、村上隆「マイ・ロンサム・カウボーイ」1516万ドル(日本人作家最高落札価格)
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