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エコール・ド・パリ時代の画家を、どれほど知っていますか?<北欧編>
~ムンクやミュシャもあのときパリにいた

20世紀初頭、フランス近代絵画からアメリカ現代美術への過渡期。
戦乱の時代に命を燃やした芸術家を、各国別に紹介するシリーズの第三弾です。
前回までに、ヨーロッパの主要国とアメリカ大陸北部、そして日本の代表を選びました。
今回はヨーロッパの残りの国に焦点を当てます。
世界各国の才能豊かな画家を皆さんに紹介できることは、大変な喜びです。

 


前回までは1870~1890年代生まれの画家だけを選んできましたが、選択肢が少なくなってきたので、今回は1860年代生まれと1900年代生まれの画家も候補に入れました。

1860年生まれの画家といえば、アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)です。
ミュシャは、当時はオーストリア帝国の一部だった、現在のチェコに生まれました。
後に、チェコスロバキアが独立したとき、ミュシャは新国家のために無償で紙幣や切手や国章のデザインを行ったそうです。愛国心があったのですね。
しかしミュシャの死後、チェコスロバキアは、チェコとスロバキアに分離しました。極端なナショナリズムは国家の分離も招くのです。

 

ミュシャ 「アートカード・リトグラフ:12月」 作品詳細 >>

 

ミュシャと同じく、国家に悩まされたのが、抽象絵画のカンディンスキー(1866-1944)です。
カンディンスキーはモスクワ生まれのロシアの画家ですが、ドイツで絵画を学んで画家としてのキャリアを積み、ロシア革命でソ連となった祖国に戻ったのですが、共産党指導部と反りが合わず、ドイツに戻ってドイツ国籍を取得します。
ナチスの台頭に伴って再びドイツを離れ、今度はフランス国籍を取得してフランスに住みますが、ほどなくしてフランスもナチスに占領されます。
アメリカから亡命を勧められたカンディンスキーですが、そのままフランスにとどまり、第二次世界大戦の終結を見ずに亡くなりました。

 

カンディンスキー「コンポジションVIII」

 

次に、北欧五か国に移ります。
ノルウェー代表は、満場一致でエドヴァルド・ムンク(1863-1944)でしょう。他に対抗馬が見当たりません。ムンクの「叫び」は「モナ・リザ」と並ぶ有名絵画ですから、説明は不要でしょう。

 

ムンク「吸血鬼」

 

隣国スウェーデンには、時代がやや前になりますが、カール・ラーション(1853-1919)という国民的画家がいます。ラーションは印象派展が開かれた頃にパリで絵の修業をしていて、当時流行のジャポニスムに出会い、浮世絵や陶磁器などの日本美術をスウェーデンに紹介したことでも知られています。
しかしながらラーションは印象派時代の画家なので、エコール・ド・パリと同世代の画家としてヨン・バウエル(1882-1918)のほうを代表に選びます。船の遭難事故で36歳の若さで亡くなったバウエルですが、童話の挿絵などで死後も名を残しました。

 

バウエル「馬に跨る騎士」

 

次のフィンランドで日本人が最もよく知る画家は、ムーミンの作者トーベ・ヤンソン(1914-2001)になるでしょう。
しかし、ヤンソンでは若すぎるので、ここはフィンランドの国民的画家であるアクセリ・ガッレン=カッレラ(1865-1931)に登場してもらいます。カッレラもまた、パリで5年間絵の勉強をしました。

 

カッレラ「サンボの防衛」

 

デンマーク代表には、日本での知名度はあまり高くありませんが、ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)を選びたいと思います。
ハンマースホイの絵は、北国を感じさせる静謐さを持つ素敵な具象画なので、まだご存じない方は、ぜひ一度ご覧になってみてください。

 

ハンマースホイ「読書する若い男のいる室内」

 

最後にアイルランド代表には、フランシス・ベーコン(1909-1992)を推薦します。フランシス・ベーコンという名前では16世紀の哲学者が有名ですが、ここで取り上げるのは、その遠い親戚にあたる20世紀の画家です。ベーコンは、抽象画の流行した20世紀に、具象画にこだわり続けた画家でした。

次に、バルト三国からリトアニア代表とラトビア代表を選びます。

リトアニア生まれのベン・シャーン(1898-1969)は、両親とともにアメリカに移民して、画家として成功しました。日本では、アメリカの核実験で被爆した漁船・第五福竜丸をテーマにした連作絵画で、知名度が高いです。

ラトビア生まれで、幼少時にアメリカへ移民したマーク・ロスコ(1903-1970)も、20世紀の画家として、広く知られた存在です。ロスコは、ジャクソン・ポロックやウィレム・デ・クーニングと並んで、アメリカの抽象表現主義の代表者になりました。

 

以上、1860~1900年代生まれの画家を、主に北欧から東欧にかけて9か国の代表を選びました。

 

チェコ代表:アルフォンス・ミュシャ(1860-1939)
ロシア代表:カンディンスキー(1866-1944)
ノルウェー代表:エドヴァルド・ムンク(1863-1944)
スウェーデン代表:ヨン・バウエル(1882-1918)
フィンランド代表:アクセリ・ガッレン=カッレラ(1865-1931)
デンマーク代表:ヴィルヘルム・ハンマースホイ(1864-1916)
アイルランド代表:フランシス・ベーコン(1909-1992)
リトアニア代表:ベン・シャーン(1898-1969)
ラトビア代表:マーク・ロスコ(1903-1970)

 

 

 


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