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京橋のアーティゾン美術館が、3つの展覧会を同時開催
~「マティスのアトリエ」が目当てで行ってみたら、他の2つも魅力的でした!

アーティゾン美術館1階エスカレーター前
(スクリーンにてマティスの切り絵作品を映像で紹介)

翠波画廊の近所にあるアーティゾン美術館は、23階建てのミュージアムタワー京橋の1階から6階までにあたります。
といっても、1階はカフェ、2階はショップ、3階はロビーとレクチャールームになっていて、展示室は4階から6階の3フロアになります。
2024年11月2日から2025年2月9日までの約3ヶ月にわたって、3フロアのそれぞれで別々の展覧会を開催しているので観覧してきました。

日本を代表する現代アーティスト毛利悠子の大規模展示

アーティゾン美術館の受付は3階ですが、展示室は6階から下に降りていくような動線になっています。
今回の展示は以下の3つでした。
6階「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×毛利悠子—ピュシスについて」
5階「ひとを描く」
4階「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 マティスのアトリエ」
順に見ていきましょう。

6階で日本初の大規模展覧会をおこなっている毛利悠子さんは、2024年開催の第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本館の出品作家に選ばれた、旬の現代アーティストです。
タイトルにある「ピュシス」とは、「自然」や「本性」を意味する古代ギリシア語です。
絶えず変化する「ピュシス」は、動き続けるキネティック・アートである毛利悠子さんの作品に呼応したタイトルでしょう。

今回の展示は「ジャム・セッション」と銘打たれていて、アーティゾン美術館の「石橋財団コレクション」収蔵作品にインスピレーションを得て、毛利悠子さんが新・旧作を発表する場となりました。
展示会場には、石橋財団コレクションの作品と、それに対応する毛利悠子さんの作品が並べられています。
たとえば、クロード・モネ《雨のベリール》に対する毛利悠子さんの作品は、巨大なスクリーンとピアノと音響装置を連動させたインスタレーション《Piano Solo: Belle-Île》になります。

音と動きとを使った毛利悠子さんの作品の面白さは、実際に行って体験してみなければなかなか伝わりません。
作品を動かすには何らかのエネルギーが必要になりますが、自然界に存在する磁力や、果物内に生じる電気抵抗を利用し、自律的な動きを発生させているのが見どころです。


クロード・モネ《雨のベリール》 1886 年、
石橋財団アーティゾン美術館

毛利悠子《Piano Solo: Belle-Île》のためのスケッチ、2024 年

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ひとはひとをどのように描いてきたのか?

5階の展示は「ひとを描く」と題して、古代ギリシアから現代までの作品に描かれた「ひと」に焦点を当てています。
絵画には風景画や静物画などの種類がありますが、古来より最も人気があるのが人物画です。
翠波画廊で取り扱っているギィ・デサップのような風景画でもたいてい「ひと」が描かれていますし、ハンス・イヌメの描く動物たちも「ひと」のような喜怒哀楽を感じさせます。
なぜわたしたちはこれほどまでに「ひと」の顔に魅了されてしまうのか、さまざまな画家が描いた肖像画や自画像を見ながら考えてしまいます。
会場では古代ギリシアの陶器、古代ローマのモザイク画や壁画から、近代のマネ、ドガ、セザンヌ、ルノワール、ピカソ、マティス、ルオーなどの色とりどりの人々を楽しむことができます。


アンドレ・ドラン《ヴァイオリンを弾くヴラマンクの肖像》
1905 年、石橋財団アーティゾン美術館

アンリ・マティス《パティチャ》1947 年、石橋財団アーティゾン美術館

アンリ・マティスと肘掛け椅子

アンリ・マティス《踊り子とロカイユの肘かけ椅子、黒の背景》
1942年、石橋財団アーティゾン美術館

4階は「石橋財団コレクション選」ですが、その中の一角に「特集コーナー展示 マティスのアトリエ」があります。
今回の展示の目玉は、アーティゾン美術館が近年コレクションに加えた《踊り子とロカイユの肘かけ椅子、黒の背景》です。

この作品を描いた当時、マティスは前年に受けた腸の大手術の影響で、あまり身体を動かすことができませんでした。
そこで寝椅子のように改造したベッドの上で描いたのが《踊り子とロカイユの肘かけ椅子、黒の背景》です。
モデルになったのはイタリア人の踊り子カルラ・アヴォガドロで、彼女の隣にあるのがルイ15世時代のロカイユ様式で作られた肘掛け椅子です。ロココ美術の時代ですね。
マティスはニースの骨董品店でこの椅子を見つけてたいへん気に入り、購入していくつものスケッチを残しています。
椅子の肘掛けの優美な曲線が、踊り子の女性の手足の曲線と対応していて美しいです。

《踊り子とロカイユの肘かけ椅子、黒の背景》は、マティスの次男ピエールの最初の妻となったアレクシスに譲られました。
ピエールと離婚したアレクシスがマルセル・デュシャンと再婚したので、この作品はデュシャンのニューヨークの自宅の壁を飾っていたこともあったそうです。
アレクシスの死後、この絵はピエールとアレクシスとの長女である芸術家のジャッキー・マティスの持ち物となりました。
ジャッキーが2021年に90歳で亡くなった後、売り出されたものをアーティゾン美術館が手に入れたのです。
絵の由来を知ってから見ると、いっそう味わい深いですね。



翠波画廊では、マティス作品を取り扱っています。
ぜひご覧になってください。

マティス作品一覧はこちら >>


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