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睡蓮! 水面! また睡蓮!!

~国立西洋美術館「モネ 睡蓮のとき」はジヴェルニーを味わえる展覧会

モネといえば睡蓮、睡蓮といえばモネです。
モネが描いた「睡蓮」の絵画はおよそ250枚と言われています。


今回の「モネ 睡蓮のとき」には、世界最大級のモネ・コレクションを誇るパリのマルモッタン・モネ美術館より、日本初公開作品を含む約50枚が来日。さらに日本各地に所蔵される作品も加え、モネ晩年の芸術の極致が堪能できます。


モネが睡蓮の絵を描き始めたのは、50歳でジヴェルニーに家を購入して、広大な池を持つ庭を作ってからです。
ジャポニスムに影響を受けていたモネは、池に日本の太鼓橋をかけて、日本から取り寄せた睡蓮を浮かべて、毎日のように睡蓮の絵を描きました。


本展ではモネが86歳で亡くなるまでの庭の絵を見ることができます。

モネの得意な日の出の風景

クロード・モネ 《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》1897年
マルモッタン・モネ美術館、パリ(エフリュシ・ド・ロチルド邸、
サン=ジャン=キャップ=フェラより寄託)
© musée Marmottan Monet / Studio Christian Baraja SLB

モネと言われてイメージするのはどのような絵でしょうか?
個人的には、霧の向こうにぼんやりと見える風景と、水平線を境に反転して水面に映るさかさまの風景が、もっともモネらしいと感じています。


本展で最もそれに近かったのは、同じジヴェルニーの風景でも、モネの庭の池ではなく、セーヌ川の日の出を描いたものでした。
入口のほど近くにある《ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出》の美しさには、時間を忘れて見とれてしまいます。


モネはこの連作で陽の光のうつろいを描くために、毎朝3時半に起床して、14点ものカンヴァスを並べて順番に描いていったそうです。
太陽がのぼるに従って作品の色は赤みを帯びていきますが、ここに掲載したのはまだ未明の、青と紫におおわれた時間帯のものです。

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あえて水面に映った風景を描く

クロード・モネ 《睡蓮》 1907年 マルモッタン・モネ美術館、パリ 
© musée Marmottan Monet

モネの睡蓮の絵の特徴的は、もはや空を描かずに水面だけを描いた作品が多いところです。


水面には、池の周りの木々が反射して逆さまに映っていますが、それだけではなく水面に浮いている睡蓮も同時に描くことで、2つの次元が合わさったユニークな画面が出現します。


モネ自身も「水と反映の風景に取りつかれてしまいました」と書き残しているように、ゆらゆらと風景を反射する池のおもてにはモネを魅了する魔力があったのでしょう。


その魔力は描かれた絵を見ている私たちをもとりこにします。

半分失われてしまったモネの傑作

クロード・モネ 《睡蓮、柳の反映》1916年? 国立西洋美術館(旧松方コレクション)

「モネ 睡蓮のとき」は、2024年10月5日から2025年2月11日まで東京・上野の国立西洋美術館で開催し、その後に京都市京セラ美術館(2025年3月7日-6月8日)、愛知の豊田市美術館(2025年6月21日-9月15日)と巡回します。


東京の国立西洋美術館は、もともとモネ《睡蓮》を所蔵していることで知られていますが、それは所蔵品の基礎になった松方幸次郎コレクションに多数のモネ作品が含まれていたからです。


松方はジヴェルニーのモネの家を訪問して、モネから直接18点ほどの作品を購入したと言われています。
その中に含まれていたのが横約4メートル、縦約2メートルの巨大なキャンバス作品です。
長らく所在不明でしたが、2016年にルーヴル美術館の倉庫で見つかり、日本に返却されました。
しかし、長年放置されていたために上半分は絵の具が剥離した無惨な姿になっていたのです。
現在の修復技術で写真をもとに復元することも可能でしたが、美術館はこのままの姿で保存することを選びました。

白内障に煩わされてもモネはモネ

クロード・モネ 《日本の橋》1918-1924年頃
マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

モネは68歳になる1908年頃から白内障による目の不調に悩まされるようになります。


現代であれば手術で良くなる白内障ですが、モネは失明を恐れてなかなか手術を受けようとしませんでした。
そのため、当時のモネの絵は色彩においても形態においても、悪化する視力を反映して、抽象画にも似た凄まじさを感じさせます。


たとえば《日本の橋》は、モネの庭の池にかかる日本の太鼓橋を描いたものですが、かろうじて橋のかたちや水面は見えるものの、赤を基調にしたその姿は建築物というよりも生命体のように見えてしまいます。


しかし、モネを代表とする印象派は当初から前衛的すぎる作風と言われていたのですから、この作品もまたモネらしいと言わざるを得ません。

円熟味を増した晩年の傑作

クロード・モネ 《ばらの庭から見た家》 1918-1924年頃
マルモッタン・モネ美術館、パリ © musée Marmottan Monet

日本の橋の絵に驚いてしまいましたが、晩年のモネが変わってしまったわけではありません。


同時期に描かれた《ばらの庭から見た家》は、やはりモネとしか言いようのない美しさに満ちています。


手前のばらの草木を通して、真ん中から左上にかけて見えるモネの家は画面に近づきすぎると曖昧模糊としてしまいますが、少し離れて眺めると、まさにモネが見たとおりの風景として立ち上がってきます。


「モネ 睡蓮のとき」展はモネのファンであれば必見の展覧会です。ぜひ御覧ください。

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