うっかり捨てられた絵画の価値がン億円?
~アートの価値がわかる人は少ないの?
芸術品というのは不思議なもので、価値の分かる人にとってはかけがえのない宝物ですが、そうでない人にとっては、ほとんど不用品です。
古今東西、名画が粗末に扱われたり、処分されたりした事例がいくつもあります。
たとえば、ゴッホの絵画《レー医師の肖像》は、ゴッホが主治医に御礼として贈呈したものですが、送られた医師はこの絵を気に入らず、鶏小屋の穴をふさぐために使っていたそうです。
それでも後世に残ったからよいものの、そのまま消失してしまった絵画も多くあります。
今回は、捨てられてしまった可哀想な絵画たちをご紹介しましょう。
東京大学でも絵画の価値がわからない?
捨てられた絵画として、近年最も話題になったのは、東京大学の生協中央食堂に飾られていた宇佐美圭司氏の壁画《きずな》が、2018年の建物改修工事の際に廃棄されてしまったことです。
そもそもこの壁画は、1977年の東大生協創立30周年記念の際に、東大の高階秀爾教授の推薦で、宇佐美圭司氏に制作を依頼したものです。その40年後の2017年、建物の老朽化に伴う改修工事にあたり、設計連絡会議は壁画の廃棄を決定してしまいました。4メートル四方と大きすぎて移転や保存が難しいことなどが問題とされたようです。
改修後、壁画の所在地を訊ねる質問が生協に寄せられ、処分されたことが発覚し、メディアに報道されるほどの大問題になりました。
所有者である生協自身の決断による廃棄であったため違法性はありませんでしたが、公共性や文化性の問題から、生協は関係者に深くお詫びをする羽目になりました。
余談ですが、翠波画廊代表は多摩美術大学の学生だった頃、宇佐美先生に教わったことがあります。「現代美術は、現代にはもはや普遍的な美は存在しないと認識する地点から始まった」と述べる宇佐美先生に対し、「誰もが認めるような普遍的な美はないとしても、作品を見る人々の心の中に美は存在するのではないですか?」と反論した記憶があります。
宇佐美先生は藝大受験で不合格となり、独学で画家となられた努力家でした。2012年にご逝去されたそうですが、ご冥福をお祈りします。
貸したはずの絵がいつのまにか捨てられていた?
絵の価値を知らない職員による処分の事例は他にもあります。
2006年には、茅ケ崎市の公民館で、同市在住の日本画家・中尾誠氏から展示用に預かった絵画11点を勝手に廃棄していたことが発覚しました。中尾氏は絵の所有権を持ったまま預けたのですが、市役所職員は寄贈されたものと思い込み、整理の際に粗大ごみとして廃棄してしまったようです。もちろん大問題になりました。
絵というものは、ある人にとってはかけがえのない価値のあるものですが、別の人にとっては邪魔なごみになってしまうのですね。
ゴミ捨て場で拾った絵が1000万円以上に!
※本文記載の作品ではございません。
一度はゴミとして捨てられたのに、すんでのところで救われた絵画もあります。
2003年のニューヨークにて、エリザベスさんは散歩中、ごみ捨て場に捨てられていた一枚の絵画に目をとめて、素敵だから自宅に飾りたいと拾って帰りました。
その後、エリザベスさんはインターネットにて、その絵画が16年前に盗難された作品として掲載されているのを発見しました。
持ち主のもとに返却された絵画は、2007年にサザビーズのオークションに出品され、約1億1400万円で落札されました。1977年の購入時には約600万円でしたが、30年間で19倍もの価格に値上がりしたのです。
拾って返却したエリザベスさんには謝礼金として何百万円かが支払われたそうです。
この幸運な絵画のタイトルは《トレス・ペルソナヘス(3人の人物)》。
タイトルがスペイン語であることからもわかるように、作者はメキシコ人画家のルフィーノ・タマヨ。翠波画廊でも取扱いのある有名画家です。
タマヨの絵は、おそらく盗難にあった後に、紆余曲折あって捨てられることになったのでしょう。捨てた犯人はいまだに不明のままです。
盗まれて、壊されて、捨てられた?
このように、盗難された後に、犯人の身勝手で廃棄される絵も少なくありません。
18世紀のフランスの画家フランソワ・ブーシェによる絵画《眠れる羊飼い》は、シャルトル美術館所蔵の名品でしたが、1996年に盗難の憂き目にあいます。
その後、2001年に犯人は逮捕されましたが、作品は戻ってきませんでした。
犯人の母親が証拠隠滅しようとして、手元にあった絵画をすべて処分してしまったのです。
こうして、この絵は二度と実物を見ることができなくなってしまいました。
捨てられたお宝
最近でも、ゴミの中から絵が見つかる例は後を絶ちません。
ドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」によると、2021年6月8日、高速道路のサービスエリアの廃棄物収集コンテナから2枚の油絵が見つかりました。
絵が金色の立派な額縁におさめられていたことから、見つけた男性は拾得物として警察に渡しました。
専門家が鑑定したところ、2枚の絵は17世紀に描かれた作品であるとのことです。
確定したわけではありませんが、1枚はオランダのレンブラントの弟子サミュエル・ファン・ホーホストラーテン、もう1枚はイタリアのピエトロ・ベロッティの作品である可能性が高いそうです。
諸行無常と有為転変
捨てられても、拾われて陽の目を見る絵もあれば、捨てられたわけでもないのに壊れてしまう作品もあります。
2021年8月9日、東京オリンピックが閉幕した後の3連休の日本を、3つの台風が襲いました。
そのうちの1つ、ルピートと名づけられた台風9号は九州から東に向かい、瀬戸内海を通過中に、直島に屋外展示されていた草間彌生の作品《南瓜》を壊してしまったのです。
直島は、通信教育で有名なベネッセコーポレーションによって、ベネッセアートサイト直島として開発されてきました。安藤忠雄が設計してモネの作品を展示する地中美術館のほか、島全体が大きな美術サイトとして機能しています。
その直島のシンボルとして知られていたのが、海を臨む桟橋に設置された高さ2メートル、幅2.5メートルの強化プラスチック製の《南瓜》でした。
この《南瓜》が、今回の台風による高波にさらわれて、海に流されて、波とともに何度も桟橋に打ちつけられて、大きく3つに割れてしまったようです。
過去には台風に備えて一時的に避難させたこともあったようですが、今回は大丈夫だろうとそのままにしていたことで被害を受けてしまいました。
ベネッセは修復して再展示したいとしていますが、破損が大きいため、どうなるかはまだわかっていません。
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