「絵の値段」というのは、初めての方にとって分かりにくいものですよね。 好きな絵を見つけても、値段を聞くと、高いのか安いのか判断ができず、買うのをやめてしまった、 なんてことはありませんか? 日用品や実用品と違って、同じものを目にする機会が少なく、 販売店も限られている美術品は、自分なりに判断できる情報が少ないため、 付けられている価格に疑問や不安を抱かれる方が多いのだと思います。 そんな時、あらかじめ適正な価格、つまり相場感が分かっていれば、 安心して絵画購入を楽しめるのではないでしょうか。
今回は、美術品の価格に対する疑問や不安を少しでも解消していただくために、 美術品の価格の仕組みについてご説明いたします。
美術品の価格は何で決まるの?
美術品の価格は、数万円から数億円まで、作家や作品によって大きく異なります。
美術品に限らず、すべてのものの値段は、需要と供給という基本的な経済原則に基づいて決まります。 つまり、市場での需要が多くて供給が少なければ価格は高くなり、需要が少なくて供給が多ければ価格は安くなります。 美術品にも相場があり、美術商だけが出入りの出来る交換会(業者間オークション)や、 世界中で日々開催されている公開オークションで相場が決まります。
当然人気画家の作品は高く、同じ画家の作品でも、その画家を代表するモティーフ(題材)が描かれた絵であれば高いのですが、反対にその画家らしくない題材を描いたものは安くなってしまいます。 翠波画廊代表・高橋の著書「値段で読み解く魅惑のフランス近代絵画」(幻冬舎出版)では、同じ巨匠によって描かれた絵画が、その題材によってオークションで一桁違う値段で取引される事例と、絵の値段がどのように決まるのかを過去の事例とともに紹介していますので、よろしければお手に取ってみてください。
相場感をもとう
買いたい絵を見つけたとき、作品の内容はもちろんですが、価格も納得して買いたいものです。 疑問や不安を持つことなく安心して購入するためには、あらかじめ好きな作家や作品の相場を知っておくことが大切です。
世界的に人気があり翠波画廊でも取り扱いのあるベルナール・ビュッフェの作品を例にとって、相場を具体的にご説明いたします。
ビュッフェの相場
ベルナール・ビュッフェは、1948年、20歳でパリの最も権威ある新人賞・批評家賞を受賞し、具象画の旗手として大きな注目を集めました。黒の鋭い描線とモノトーンに近い抑えた色調を特徴とする独自の画風を築き、油彩のみならず優れた版画も数多く制作、現在に至るまで世界中で高い評価と人気を得ています。静岡県三島市には’72年に開館したベルナール・ビュッフェ美術館もありますから、その名前をご存知の方も多いのではないでしょうか。
ビュッフェは生涯にわたり油彩、水彩、素描、版画を精力的に制作しました。
油彩、水彩、素描の具体例
「花束」 1980年 油彩 15号
ビュッフェの油絵は、大きさやモティーフによって値段は違ってきますが、日本で好まれる15号大の作品は、当画廊では1500~2200万円位で販売しています。当然、サイズが大きくなれば値段も高くなります。また、小品は余り描かれていないため、サイズの割に割高になってしまいます。
「教会、ドゥルダン」 1976年 グワッシュ 15号
グワッシュとは水彩絵の具の一種で、顔料を アラビアゴムの水溶液で練ったもの。速乾性の特徴を生かし、閃きを瞬時に作品にすることができるため、ビュッフェは好んでこの技法で作品を制作しました。価格は15号大の作品が多く、モティーフによっても違うのですが600~800万円位です。
「魚のあるデッサン」 1951年 鉛筆・紙 15号大
ビュッフェには、紙に鉛筆、インク、パステルなどの画材で描いた作品も数多く残しています。価格はやはり15号大のものが多く200~350万円位です。
版画の値段
ビュッフェは版画家としてもその才能を遺憾なく発揮し、生涯に数多くのリトグラフ(石版画)と銅版画を制作しました。リトグラフでは伸びやかで力強い漆黒の描線、銅版画では細く鋭い描線と、それぞれの技法ならではの特性を生かした表現で独自の世界を築き、高い評価を得ています。
「アルバム・パリ:エッフェル塔」 1962年 リトグラフ 150部 50.5x66cm
初期の代表作。パリの数々の名所を取り上げた10点の連作版画(パリシリーズ)からの一点です。図柄によっても違いますが、現在は70~90万円位で販売しています。
「チューリップ」 1977年 リトグラフ HC(~部) 66x47㎝
評価・人気の高い代表作には初期の作品が挙げられることが多いのですが、ビュッフェの花を描いた作品では、’70年代以降の色が明るく鮮やかな作品を好まれる方が多いようです。現在、花を題材とした版画は35~55万円位で販売しています。
「干潮時のヨット」 1980年 銅版 150部 48x62.5㎝
座礁したように思い思いの方向へ船体を傾けるヨット、そして高く林立するマストの太い線など、ビュッフェの描線を堪能できる作品です。 モノクロ銅版画の価格は25~35万円位で販売しております。
今回はビュッフェを例に、相場感についてご紹介して参りましたが、 同じ作家の作品でも、技法によって価格の違いがあり、 その価格帯を頭の中に入れておくと、欲しい作品を見つけたときに、安心して購入を検討できると思います。 好きな画家を見つけたとき、好きな作品を見つけたときには、どうぞお気軽にお問い合わせください。
私たちがご提供できること
1. 絵画購入のご相談
熟練の画商が、あなたにあった、絵画をたくさんのコレクションの中からご提案します。もちろん、無理に販売するということではありません。あなたがどんな絵画をどんな値段でほしいと思っているのか、あなたの要望に合わせて、選び方、設置シーンを検討しながら、提案させていただきます。
2. 絵画売却のご相談
現在、ご自宅に絵画や美術品をお持ちの方で、どのように売却すればいいかわからないという方のためには、相場を踏まえて買取査定価格を出させていただきます。きっと家で大切にされていた美術品でしょうから、お好きで大切にしてくださる次のお客様へと私たちが橋渡しをさせていただきます。
3. 絵画を使った節税対策
会社を経営されている方や病院の院長様、または個人事業の方は、絵画を使った節税が可能です。具体的なスキームと、購入後の流れ、売却なども視野に入れた具体的な内容をアドバイスします。