ハンス・イヌメ来日展情報
~今ヨーロッパで注目の人気作家ハンス・イヌメが2年ぶりの来日展を開催~
鑑賞者へダイレクトに伝わる作品づくり
今でこそ多くのファンを獲得してヨーロッパはもとより日本でも画家として商業的にも成功しているハンス・イヌメですが、美術学校を中退した後、今の絵のスタイルに行きつくまでには、ドイツ表現主義の影響を受けた抽象絵画や、アフリカの原始美術から想を得たと思われる作品を数多く描いていた試行錯誤の時代がありました。
イヌメにとっての模索の時代は美術学校の非常勤講師のかたわら多才な芸術的才能を生かしロックバンドのベースギターを担当し生計を立てつつ画家としての成功を夢見て絵を描いていました。しかし絵画表現に寛容なオランダですらイヌメの描く抽象絵画は展覧会に出品するたび周囲の人から「何を描こうとしているのか?」「何を表現したいのか?」などと絵の説明を求められ当然絵が売れることもありませんでした。
「1987年に鶏をモチーフにした絵を展示会に出品したところ絵を見に来たお客さんが自分の絵の前で立ち止まり、描かれた鶏を見て首を傾げながらにっこり笑って絵から離れていった。その時、自分の表現したものが鑑賞者にダイレクトに伝わる実感が初めて得られた」
とイヌメは語っています。
それが転機となり、以来イヌメの作品にはデフォルメされた動物が描き込まれるようになります。
イヌメにとっての版画
イヌメの描く動物はオランダで人気を博し、版画出版の提案やキャラクターグッズの制作依頼が来るようになります。版画制作にもイヌメの豊かな才能が発揮され、そのこだわりは紙選びから始まりました、試行錯誤の末選ばれたマルベリー紙はタイ製の手漉きの紙ですが柔らかな独自の風合いがありイヌメの描く絵の質感ととてもよく合います。しかし、手漉きの紙は本来版画用としては適さず刷りむらが出ますが刷り上った後イヌメ自身が確認し刷りむらに色を加え修正していきます。また、手彩色を施す際その時のインスピレーションによって加筆されるため一枚一枚仕上がりが異なります。また、イヌメ版画の魅力は版画が均質に作られた単調な複数芸術となってしまわないよう版画を刷るとき大きめの紙に刷り、不要な余白の部分を折り返し、折り目を湿らしたスポンジで濡らし、ちぎることによって版画の一枚一枚が版画の域を超えたひとつの作品となるようこだわり貫いて作られています。
イヌメが作り出した独自の技法(マルベリー転写法)
また、イヌメのミクストメディアはちょっと変わった方法で作られています。支持体となるのはキャンバスやボードですが他の画家のようにいきなりそこに描くわけではありません。まずは版画と同じ厚手のマルベリー紙をキャンバスにのりを塗り包み込むように貼ります。
次にアクリル絵の具の黒に少し赤を混ぜ合わせたものを板の上にゴムのローラーで薄く広げていきます。その上に薄い紙を載せ鉛筆で絵を描いたり圧力を加えると紙の後ろに絵の具が付きます。その下絵を描く時は素早くインスピレーションで気に入る線が描けるまで描いては捨て描いては捨てを繰り返します。そのようにして何枚かの絵を描いた後、乾かして先に紙を貼ったキャンバスにのりで貼っていきます。
その後、オイルパステルで色づけをしていきます。オイルパステルで描かれた後、テレビン油(油絵の具の薄め液)で色を滲ませたり拭き取ったりします。時には金属のヘラで削ったり、加筆したりと絵肌を整えていきます。
イヌメが考案した独自の技法(マルベリー転写法)で作られる作品はぬくもりのある優しい質感となりそのマチエールもイヌメ作品の魅力の一つです。長い試行錯誤の時代を経て蓄積されたテクニックがイヌメの作品を味わい深いものにしています。しかし、長々とイヌメの魅力を語ることより
「彼の作品をどのように観るかは、実のところ大した問題ではない。一日の終わりにイヌメの作品を観れば、私はいつでも幸せな気分になれるのだから。」
本作品集に寄せられた美術評論家ピーター・バッカー氏のこの一言が最も的確にイヌメの魅力を語っています。
来日展情報
6月17日(水)~23日(火)伊勢丹新宿店 来場日 17日(水)、21日(日)14:00~17:00
6月11日(木)~17日(水)東武百貨店船橋店 来場日 14日 (日)11:00~18:00
6月16日(火)~22日(月)札幌三越 来場日 20日(土)14:00~17:00
6月16日(火)~22日(月)松山三越 来場日 16日(火)10:00~17:00
この機会にどうぞご来場くださいませ。