色彩の魔術師と呼ばれ、その鮮やかで幻想的な色彩によって描かれる数々の作品は、世界中の人々を愛と夢の世界へと誘います。そんなシャガールが残した言葉に「私の哀しみの全て、喜びの全てをその中におさめることができる」というものがあります。 シャガールがここまで言うほど情熱を傾けたもの、それは版画です。絵画の他にもステンドグラスや本の挿し絵、陶芸、舞台装置、モザイク作品など生涯にわたって非常に多くの作品を手がけたシャガール。その中でも版画は、シャガールが自由に遊び、感情のすべてを込めることのできる魅力的な表現方法だったのかもしれません。鑑賞用として制作されたリトグラフポスターの中でも、「三大リトグラフポスター」と呼ばれる作品三作品があります。

「ポスター：魔笛」
1967年 リトグラフ 3000部 100x66cm
オペラ座でのモーツァルトのオペラ「魔笛」の初演のために制作、発表されたリトグラフポスターです。ポスターだけでなく、舞台装飾と衣装も担当したシャガール。「魔笛」への想いの深さが感じられる本作は、鮮やかな色彩と、美しい音色が響いてくるような構図が、息を呑むような美しさです。シャガール芸術の真骨頂ともいえる作品です。

「ポスター：カルメン」
1967年 リトグラフ 3000部 102×66.5cm
スペインを舞台にした情熱的な愛の物語「カルメン」を表現した作品です。シャガールはよく、音楽を聴きながら制作したと言います。リズムよく刻まれる物語が、感情の高ぶりとともに、観る者の心を震わせる作品です。人物の衣装にもこだわった、劇場型の空間をお楽しみください。

「ポスター：ロミオとジュリエット」
1964年 リトグラフ 5000部 65x101cm
ご存知の方も多いと思いますが、有名なパリ、オペラ座の天井画で描かれた一部分です。愛の画家シャガールが描いた美しい恋人たちは、時代を超え、国境を越え、私たちに幸福を運んでくれます。